「ただいま大須商店街」(東海テレビ・ドラマ)

  • 番組名:「ただいま大須商店街」
  • 放送局: 東海テレビ
  • 放送日時:2019年1月2日

「ふるさとイチバン!」を創立60周年のキャッチコピーとした東海テレビが、エリアにこだわって敢えて「エリアドラマ」と銘打って制作した90分ドラマ。ドラマの筋書きとしてはびっくりするものはなく、極めてオーソドックスな作劇にまとめ上げられていた。演出も長いこと在名で「中学生日記」を手がけてきた磯部氏による破綻のないもので安心して見ていられた。HPによれば、「視聴者に郷愁を感じて欲しい」らしく、おじいちゃんが孫と大須の街を散策する中で、往時の古い報道等の映像を挿入、(唐突感はあったが、まあ「郷愁」を感じる方もいるでしょう)ひと味違った演出もあった。出演者も当然ながら東海エリア出身者で固めてあった。

しかし「エリアドラマ」がなぜ今、まだ(また)大須なのか、陳腐感も漂うのだ。ストーリーは大須商店街の持つ「ごった煮感」、「ダイバーシティ感」を全面に出したい従来の商店主と、ニューヨークの五番街のようにスタイリッシュに改造し、リニアが開通する名駅や栄に対抗しようとする国会議員一派がの対決の中から、「ふるさとの顔の見える繋がりを活かせる」という大須の良さをあぶり出すという構成だ。

無理なく進むストーリーだし、想像出来てしまうラストのオチや、いささか「クサいセリフ」も含め「大須の過去・現在・未来を描き、ごく普通の納得性を持ったドラマ」に仕上がってはいる。それはそれでいいのだけれど、60周年記念に相応しい東海エリアの未来に繋がる新しい視点を見てみたかった。あまりにも予定調和が過ぎたウラミが残った。(本ドラマでも一応未来の大須のあり方を示唆するラストではあるが)

大須が選ばれたのは誰でも知っていてドラマのネタにしやすいということなのか、過去と現在の落差が映像化しやすいと見たのか、もう少し舞台設定や脚本に捻りが欲しいところだ。

ストーリーとは関係ないが、この番組で一番印象深かったのは「4K大判センサーカメラ」による映像だった。密度の濃い映像はローキーで被写界深度を浅くし、手前を浮き出し、背景をぼかす。陰影に富んだ深みのある映像となる。高細密映像はローキーでも黒が潰れないからシネマライクな映像となる。これを「アオリ」「俯瞰」など目線を意識したカットからシーンを組み立てていった映像の演出はなかなか見ごたえがあった。(KING)