確かにあるよね。 CBCテレビ「つい、人は・・・」

  • 番組名:人の心を巧みに操る「仕掛学」に迫る!「つい、人は・・・」
  • 放送局:CBCテレビ
  • 放送日時:2018年11月18日 25時25分~

「覗くな」と言われると「つい、覗いてみたくなる」人の心理を逆手に、アイデアと工夫で人の行動を変えてしまおうと取り組んでいる研究者がいる。
大阪大学の松村真宏教授は、「仕掛学」なる学問分野をたったひとりで立ち上げたところが素晴らしい。

例えば「ゴミはゴミ箱へ」と貼り紙するより、ゴミ箱の上にバスケットのゴールを設置した方が、自然にゴミはゴミ箱に集まる。また、エスカレーターの隣に設置された階段をピアノ鍵盤の柄に塗り、歩くと音まで鳴るように改造したら、階段の利用率が断然増えたという海外の事例もある。

松村教授自身のトライアルが、これまた面白い。思いついたアイデアを試したいという欲求実現にとどめず、人の心理を分析するデータを着実に蓄積している。例えば、パン屋で試食用のパンを客が敬遠するのは、こんな心理が働くからだとか。「何か施しを受けるとお礼をしなければならない」→「その手段は購入しかない」→「プレッシャー」。しかし、「あなたはどっち派?」と表記の上、2種類のパンを陳列し、それぞれの前に爪楊枝を刺す針山を置いてみたところ、試食者は倍増。客はどちらかの針山に軽やかに爪楊枝を刺していく。「意見の提供は、貢献になる」という客側の心理の現れだという。
また、こんなチャレンジの例もある。某ショッピングモールのフードコートでは、衛生面への配慮から客用に手の消毒器を設置しているが、ほとんど利用されていない。そこで、「ローマの休日」に登場する「真実の口」に見立てた大型オブジェの中に消毒器を置いてみたところ、利用客がなんと4倍に増加。のみならず、広場に多くの笑顔を生み、賑わいの創出にもつながったのだ。

松村教授は、「つい、人は・・・」の謎を解き、「仕掛学」を世の中を良くするために使いたいと望んでいる。「ムダ」を嫌う現代の経済社会においては「おトク感」が偏重されがちだが、遊び心には確かに人を幸せにするヒントが隠れていることを改めてこの番組を通して学んだ。

中島精隆