街の温度はヒトの温度。 東海テレビ「エリアドラマ ただいま大須商店街」

  • 番組名:「ただいま大須商店街」
  • 放送局:東海テレビ
  • 放送日時:2019年1月2日 14時~

大須というところは、上手に変化しながら賑わいを失わずに息づいている街だ。ここは、東京の浅草、下北沢、上野などの要素を持ち合わせながら地元、名古屋らしさ(ごった煮的コンセプト)を強みにしぶとく生き残っている。長く続いているゴールデンタイムのバラエティ番組のごとく、当初の企通に縛られることなく、姿を七変化させてきた。

このドラマでは、大須が、ただ時代の流れ(大企業の論理)を受け入れてきたわけではないことを実直に描いていた。
大切なマインドを次世代に託すことが必要だと。
劇中には、さほど破天荒な展開はなかったものの、日常と地道に闘う人々の気持ちが、飾らずに描かれていたと思う。

また、王道ではあるが、老舗の和菓子屋店主が大須商店街の象徴として据えられていたことにも頷けた。彼はガンコ職人ではあるが、若者や観光客に愛されるための努力(忍者の衣装で自ら接客)も惜しまない。多少の恥はかいてもこだわるべきプライドを捨てていない。細部の演出につては、和菓子屋店主(平泉成)の抑えた芝居、また、最少限かつベストマッチを心がけた音楽(冬野ユミ)も良かった。

ところで、私の実感では、大須から無くなったものと言えば、大型施設に吸収された映画館と数々のパソコンショップ。増えたものは、中古品取扱い店の品揃えとインスタ映えしやすいこじゃれたグルメ店。考えてみれば、今の大須の姿も需要に応じた変革を少しずつ進めてきた結果なのだが、昔ながらの猥雑さは健在であり、そこに魅了される人は多い。(実は私もそのひとりだ。)若い頃、演芸場を軸にして「大須商店街のCM作り」にチャレンジしたことがある。この際、取材を通して「街は施設が作るのではなく、人が作るものだ」と痛感した。名駅、栄、金山、港など街の役割がそれぞれ違う地区で、来訪者と地元民が共感できるものを真剣に探っていく作業が、きっと名古屋の未来を息づかせることにつながる。

中島精隆