CBC 濱田岳アマゾン体感暴れ怪魚猛牛大移動

2019/01/26(土)1400~1524
CBC制作、全国28局ネット
この枠での何本目かの世界を巡る紀行シリーズ KING氏の番組批評で企画の歴史や概要は語りつくされているので、私は細部について番組を語ることにしたい。

CBCのHPによればコンセプトは「俳優の濱田岳が、南米ブラジルで同世代のお父さんの生活を体験、都会から離れた大自然の中で生きる理由を探る。
このコンセプトに従って第一部はアマゾン川の浮き家の村で漁師、第二部で大湿原のカウボーイの生活を体験する。
濱田岳は3作目とのことだが、素の人柄の良さが感じ取られるいいキャスティングだ。彼自身が今回のロケ地であるアマゾンや生息する魚に対する豊富な知識や興味を持っているので、コメントに感動や喜びが自然にあふれ出る。釣り好きであることも知られていて、現地での釣りも取材を楽しんでいることがよく分かる。
半面、後半のカウボーイで彼のテンションがやや落ちるのは仕方ないかな。
時代劇のロケが簡単とは言わないし、パンタナールの馬はサラブレッドよりはやや小ぶりらしいが、アマゾンでカウボーイとして馬に乗るのは全く次元が違うだろう。現地のカウボーイ同様に馬を操り、牛を制御するのはかなり難しいと思われた。移動中に牛の群れに取り囲まれるシーンは前宣伝が何度もあったので期待値が上がってしまい、OAはやや拍子抜け。

番組が意表を突く「ざんねんないきもの」から始まった。ここから始めた以上、ブラジルに生息する多様な生物を出来るだけ描くことも必要になった。コンセプトである同世代のお父さんの生活を体験するという本筋と並行して、かなりの頻度で様々な生物が紹介された。短い時間に生態などを解説するため、情報量が多くなった。ナレーターの橋本マナミにはやや荷が重くなったと感じられた。

番組の最後に岳がまとめのコメントで「言葉選びが難しいが」と前置きして「ぶっちゃけていうと、選択肢の少ない中でこの仕事を選んできている方々なので」と彼らの生き方を語っている。つまり、大自然の中で生きる理由を探るというコンセプトの意味を制作陣に逆に問い返したように感じられた。そして、「同世代の中ではピュアなまっすぐな人だ」と位置づけ「与えられた環境の中で動物と暮らすためには勉強も必要だし、仕事も必要だし、結果必然的に大自然に敬意を持っている。」と語っている。彼は同世代には共感しても「お父さん」という設定に関心が無いようで、それは彼自身の仕事に対する基本的な考え方なのだろう。取材が続く中で最後にどう語るかを考え続けたうえで、環境の異なる中での仕事や暮らしを安易に語ることを避け、誠実に答えようとする彼の姿勢をとても気持ちよく感じた。そして、彼が言いたいことを私は私なりに受け止めた。

溢れる紀行番組の中で、土曜の午後という放送時間の視聴者の興味を切らさぬようにという制作陣の苦労が感じられた。OAをリアルタイムでなく、同録で視聴したのでやや気になった部分である。
冒頭の惹きつけだけでなく、ハイライトのカットの積み重ねと期待をあおるナレーションがあって、タイトルだ。ここまではよくあることだ。
そして、いよいよ本編に入ってもそれぞれのシチュエーションに行く前に、次のシチュエーションのハイライトカットと見どころをナレーションが語り、次に繋ぐ。小さな予告を見せては、次のコーナーなり場面に移っていく。この繰り返しが最後まで続く。
ち密な構成、ねちっこい編集、期待を持たせるナレーション。絶対にチャンネルを動かせないぞという制作陣の執念を感じた。

提供スポンサー獲得に苦労が見える。こういうスペシャルを大枠で提供するクライアントは限られているが、競合社の提供もあった。
ネット枠の獲得にはキー局との調整となんといっても営業面での支えが必要だが、大型の全国ネット番組を今後とも名古屋で制作することはますます難しくなるだろうと改めて感じた。

局としての歴史と技術の蓄積によって大きなテーマを分かりやすく、楽しい番組に作り上げた制作陣におつかれさまと申し上げたい。

澤田健邦