「おばけSUN 2019 3月24日、31日放送分」(中京テレビ:バラエティ)

  • 番組名:「おばけSUN 」”マミーがゾッ婚!”   “千原兄弟のせいじ記者クラブ”
  • 放送局:中京テレビ
  • 放送日時:2019年3月24日、31日(日曜)午後3時~4時

他局のことは知らないことが多いなあ。HPによれば「名古屋のローカル枠から全国ネットのゴールデンタイムを目指し、オモシロ企画に挑戦する。大きく化けてオバケ番組になるようなコンテンツが続々登場します。」と2014年から不定期に放送が続き、最新作で第19弾になるのだそうだ。中京テレビには土曜の深夜に「土バラ」というトライアル枠があり、日曜昼間にも。しかもそれぞれ1時間だ。時間帯が時間帯だけにCMが多いのは仕方のないことだが、トライアルを続ける編成姿勢にまずは敬意を表さねばなるまい。時間を固定して継続している方針も評価されるべきだろう。だが、その野心はしっかり視聴者に届いているのだろうか。「おばけSUN」から生まれた全国ネット番組は単発でもあったのだろうか。筆者は寡聞にして知らないが、不断の努力は必ず血肉になるので継続してもらいたい。

さて、その「おばけSUN」が二週続けて放送されたので、どちらも拝見した。「マミーがゾッ婚」は、他局でナインティナインがやっている嫁探しのシティ版、母親が決める版とでもいえようか。既視感ありありな企画で、前半は日本酒醸造家の若社長、後半はIT企業社長のお見合い。その様子をそれぞれの母親とその友人だったり親戚だったりが観察し、どの女性がウチの息子に相応しいかを見定める。息子と女性陣のやりとりと、お見合いパーティーを別の場所で観察する母親らの語りの二面の面白さが演出されていた。最後に母親はどの女性を選んだか、息子は登場する女性に驚いたり納得したりと。母の思いと息子の想い、それにテレビの前の視聴者の予想が合致したり、外れたりの面白みを狙いとする企画だと思うのだが、母子の好みは似てしまうものなのだ。視聴者の評価も。それと、この企画の難点は、素人女性のキャスティングだ。裏面を知るものとして苦労もわかるが、「仕込み」がどうしても俳優とかモデルとかになりがちとなる。いわば演出慣れしている女性軍から素直な笑いとか感動とかを得ようと思うとわざとらしさがでてしまう。その点、ナイナイの番組は素人同士なので偶発的なキャラクターのぶつかり合いが面白かったりハラハラしたりするわけだ。まあ固い事は言わず、日曜の午後に流し見するにはいいのかもしれない、そのくらいの番組だった。

次は千原せいじを起用しての企画。私は千原せいじのキャラクターを全く知らない。逆に言えばの一般的M3視聴者目線で観ることが出来たとも言える。筆者あたりが日曜の午後のこの時間辺りのコア視聴者ではないのか?本作の企画は、「世の中の、その後どうなったかウヤムヤなニュース」を千原せいじが記者となって取材する、というもの。塀の上を歩くような、かなり際どい企画、という第一印象だった。弟の千原ジュニアは多くの番組に出ていて、その元ヤンキーらしくない頭のいいコメントに感心しているわけだが、兄の方は番組で見る機会も少なく、どのような展開になっていくのか不安半分で見始めた。

前半は「紀州のドンファン殺人事件」で、殺した当人ではないか、と疑われている元家政婦に迫る。バイトをしていた東京のスナックでママからアポ取りに成功、後日関空の喫茶店で話を聞くことが出来た。千原せいじの人柄というか人間力というかが分かった瞬間だった。当然、インタビューの前にはスタッフと打ち合わせがあり、訪ねる項目も精選されているのだろうけど、せいじの手にかかると、本心せいじが聞きたいこととしてインタビューがなりたっているのが面白かった。「いいところを突く」質問と、出てきた答えを受け止めて展開出来るチカラがないと上手い会話は続かない。その点、せいじの他人の懐に飛び込むキャラクターがナイスな効果を生んだと言えるようだ。元家政婦は元来客商売の人なので慣れているといえば慣れているが、ガードが下がって喋る喋る。そのあたりのトーク、マスコミに初登場したときの衣装へのせいじからのダメ出しなど、うがった指摘もあり、この人ホントはどこまで本当のことを喋っているのか、という疑いは持ちつつ、会話は楽しかった。柴垣氏の指摘にもある通り、この手のインタビューは視聴者にバイアスを与えかねないので扱いに気をつける必要があろう。

後半はシリアで反イスラム国勢力に監禁されていた、安田純平さんに「何しに行ったん?」という素朴な疑問を投げつける。始めのうちはせいじを警戒している風な安田さんも、拘束中に食べていたというウイグル料理を食べながらの、せいじのツッコミに表情が和らぎ、現地で入手した未公開の資料を見せてくれる。ここでも、取材相手のガードを下げさせるせいじのキャラクターがホンネ(に近い部分)を引き出す役目を果たしていた。しかしながら、身代金の事とかやはりデリケートなところまでは突っ込めない。(「金にならないやつは開放する」というニュアンスを安田さんは話してはいたが)この手の番組でそこまで期待は出来ないだろう。

スタジオ(どこかのオフィス)に弟ジュニアを混ぜっ返し役に置き、報道的な押さえに堀尾正明氏を配置した。せいじ自身が驚いていたように、彼の「人たらし」の術と友人知人ネットワークはなかなか面白いんじゃないかという可能性を示唆していた。一方で、事前のリサーチとせいじにどこまでの質問をさせるか、出てきた答えをどこまで使うか、という演出側の難しさもまた示していた。この手の番組なら「土バラ」枠の方がフィットしたのではないか。(KING)