「ぼくらのショウタイム」(メ~テレ:ドラマ)

  • 番組名:「ぼくらのショウタイム」
  • 放送局:名古屋テレビ(メ~テレ)
  • 放送日時:2019年4月5日(金曜)25時26分~26時20

本編に触れる前に、このドラマの感想をどのスタンスで観て書いたか、をご説明しておきたい。昨年、2018年の日本の広告費のうち、ネット広告費は前年比116.5%の1兆7589億円に達した。これに対し、地上波テレビに投下された広告費は1兆7848億円で、前年比98.2%であった。ということは2019年、令和元年は日本広告史上初のネット広告費と地上波テレビ広告費の逆転となる記憶されるべき年になる可能性が高い。しかも、ネット広告費には600億円弱の、いわゆるマスコミ4媒体自身のネット広告出稿費も含まれている。つまり従来型のマス媒体もネットへでの宣伝を無視出来なくなってきているということだ。(データ引用=電通メディアイノベーションラボ)何が言いたいかと言うと、地上波テレビを取り巻く環境は、厳しいと叫ばれて久しいが、ここへ来て更に更に厳しい、ということ。加えて、有料ネット媒体、Netflix、Hulu、GyaO、AmazonPrimeVIDEOなどの攻勢も一段と激しい。もうずいぶん昔から地上波テレビはネットの中でどういう立ち位置が取れるのか、ポータルや、ネットメディアとの協業、CSやBSメディアとの協業、映画への出資、オリジナルコンテンツと携帯キャリアとの連携など、いくつものトライアルを重ねている。本業をきちんとエリアの視聴者に届けるために、頭の痛いことだらけだ。このドラマとその後の仕掛けに、上記のようなことを考えつつ観たのだった。

さて、本作に戻ろう。このドラマはメ~テレ土曜の朝の生番組「デルサタ」とのコラボシリーズで生まれてきたもの。製作総指揮を司会のよゐこ濱口が務める。主役はA.B.C-Zの5人で、この内2人が「デルサタ」のレギュラーだ。A.B.C-Zも結成が2008年で、最年長メンバーは33歳。ジャニーズ事情には詳しくないが、このグループはどの辺りに支持者がいるんだろうか。土曜の朝の番組を観るくらいの視聴者だろうか。そうすると、女子高校生以上ということになるのかな。ドラマは実際のメ~テレを舞台に、番組AD、カメラマン、警備員、食堂に勤めつつ放送作家を目指す青年、そして世話になった円頓寺の喫茶店が閉店するのだが、そこを救ったオムライスのレシピを女将に教えてくれた男性をなんとか探そうとする青年が主人公の5人。この青年がテレビの生放送(「デルサタ」のこと)を使って、レシピを教えてくれた男性がメ~テレファンであるというこを手がかりとして、濱口を巻き込んでなんとか「デルサタ」を観ているだろう、その男性にメッセージを送ろうと、チームを組み、実行する!という、サスペンスと友情人情味が加わったハートウォーミング?なドラマとなっている。

ドラマ自体は時間帯から言って、録画しておいて観ていただくようなものなのだろう。(或いは映画の先触れ的。後述するが、映画公開が控えているため、テレビ公開は番販がなければ名古屋以外では観られないという運命にある)魅力はA.B.C.-Zの魅力と若者受けする物語。ストーリーは、そんなことありか、とツッコミどころ満載だが、まあ根本が心温まるものなので、おじさんが目くじらをたてるようなものでもない。

監督は自らも役者を務める榊英雄。脚本は根本ノンジ。製作は大映テレビ系の「ラフ・アット」。力技で纏めた脚本を手堅い演出で若者受け良くまとめてられてはいるが、再度いうがセールスポイントは主役5人の魅力だ。芸歴10年以上のアイドルの演技も、そこそこ。で、冒頭のデータで語ったテレビ局の異業種とのコラボ話に戻るのだが、メ~テレは、これを60分ディレクターズカット版にメイキング映像を加え、劇場公開版を作り、全国13箇所のイオンシネマで1週間という期間限定の公開という作戦に出た。(1800円・学生割引なしのようだ)劇場用パンプレットも作った。(1000円)テレビという拡散してしまうメディアのソフトを映画館という限定的な客を集められるスペースで利益の底上げを図る構造で、低予算ドラマからの利益創出を目論んだ、というところか。これにSNSが絡むだろう。今や地上波テレビはなんとかして新たな事業利益構造を生み出せないものかキー局を筆頭に必死に模索を続けている。先日のCBCテレビの深夜4週連続ドラマ「ゼブラ」も携帯サイトとのコラボだ。1話ものの舞台劇を4回に渡り放送する、ということから既に相手はテレビ視聴者ではない、と見限ったような作りだった。今回メ~テレは携帯というパーソナルメディアではなく、旧来型の「映画」という分野でのトライアルを試みる。公開される本作の映画、名古屋以外ではテレビで観たくても観られていない、たくさんのA.B.C-Zファンで埋まってくれることを祈っている。それにしても、名古屋以外のファンたちは、「コケコッコー」とか、「まかない荘」(榊監督が演出担当の一人で、「ラフ・アット」が制作協力した)とかのメ~テレ落ちのセリフが分かるのかなあ・・・。(KING)