「ウマい!安い!面白い!全日本びっくり仰店グランプリ」(中京テレビ・バラエティ)

  • 番組名:「ウマい!安い!面白い!全日本びっくり仰店グランプリ(中京テレビ・バラエティ)
  • 放送局:中京テレビ(全国ネット)中京テレビ開局50周年記念番組
  • 放送日時:2019年8月9日(金曜)午後7時~午後8時54分)

本稿を書くに当たり、先に書かれている澤田氏の文章は読んでいないことをお断りしておく。(本稿を投稿して後、読みます)氏は本作製作局である中京テレビのご出身であり、裏側や内情をご存知なのでそのあたりも勘案した深い考察が行われていると思う。私はそういう内情を一切知らないし、敢えて事前にインサイド情報を教えてもらうことは避けた。というわけで観たままを述べてみたい。澤田氏の文章を読んでしまうと、書けなくなってしまう点もあるかとも感じる。澤田氏とは番組に対する視座が似ている点が多い私なので、氏と同じような感想となるところもあるかも知れない点、また内情を知らない故のトンチンカンな指摘があるかも知れないが、予めご了解頂きたい。

さて、本作は中京テレビ開局50周年記念特番であり、同局発ゴールデン2時間の全国ネット番組。単発とはいえ、編成の枠取り作業、営業のセールス、大変だったと思うが、制作を含めてやりがいのある場であっただろうと拝察する。名古屋の局がこうしてゴールデンに2時間の番組を打つことの意義は小さくない。50周年の特番のラインナップで、あと何本プライム帯にネット特番が登場するか、今から楽しみである。

前置きが長くなった。全体に見て、「大変面白かった」と総括させていただく。別の言葉で言えば「よく出来ていた」。細かい点のツッコミはあったが、苦にはならない2時間であった。

前半は、「これまた、デカ盛り、激安店紹介のチープなグルメ番組」か?と思ってい観はじめたのだが、次第に様相が変化していく。私の中でドキュメント色が濃くなっていったのだ。デカ盛りにしても、激安にしても、プロフェッショナルたちが長い時間そうしたスタイルで店を経営出来ているということは、すなわち、彼らの食に対する人生観そのものなのだなあ(いや人生そのものスタイルともいえよう)という印象が現れ始めるのだ。オチャラケで商売をしていない、という厳しいプロの姿勢がそこにはあった。食事を提供すること、という基本が好きで好きでたまらないという店主たちの姿は感動さえ覚えたのだった。

最終的にグランプリになった高崎の85歳になる焼き肉店主のパートなど、「情熱大陸」じゃないか、と思えてくるほどだ(老夫婦の夫婦愛が素晴らしい)。18店くらいがオンエアになったが、このウラには相当数のボツがあったと思う。いいキャラの店主、店に恵まれたというか良くリサーチし取材したな、と感心した。

制作面からいうと、短いテンポで1つの店に対しバッサリと切っていく進行が気持ちよかった。更に、スタジオに高田純次、ヒロミら中京テレビおなじみの顔ぶれを中心にしたコメントゲスト8人がいるのだが、VTRからスタジオに降りることは一切ない。すべてワイプで切った登場のみ。このあたりの割り切りも見事だった。つまりオープニングのスタジオ部分も無いということだ。いきなり本編。ラストも本編VTRで終わる。ワイプとVTRの音声のダブリや「吹き出しスーパー」での補助、スタジオとVTRとの間の音声の聞きにくさを排除した編集も評価したい。

先に書いたようにグランプリは高崎の85歳の店主が経営する焼き肉店が選ばれたのだが、選出の経緯などは一切なく、いきなりグランプリが発表される。また賞状を店主に渡すシーンはない。それはHPの動画でなければ観られないことになっている。ここまで割り切るか!というほどの割り切り方だ。もう少し観たいという視聴者もいるかもしれないが、グルメ番組あまたある中で、2時間をどう持たせるかの演出については相当突っ込んだ話し合いが制編で議論されたと思う。最終的に放送した形式で私は良かったと思う。今どき珍しい「勢いのある」グルメ番組、いや「グルメドキュメンタリー番組」だったといえるだろう。(KING)