新春テレビ放談2020 NHK

  • 番組名:新春テレビ放談
  • 放送局:NHK
  • 放送日時:2020年1月2日(木)22時~23時16分

もう何回になるだろう、新年早々に番組コンテンツに関して放送局を越え一年間の動向を考察する年一回の番組。千原ジュニアとNHKの看板アナ杉浦友紀がMCを務め放送に関わる気鋭のクリエイターや関係者がコメンテーターとなり鋭い分析や考察を展開する。今年のコメンテーターも興味深い最先端の論客が揃っている。

本来ここでは番組批評をするとこだが、今回はテレビ業界のコンテンツの在り方を雄弁に大胆に語っている番組なので触発されて僕も感じた事を語らせてもらう。

番組は大きく3つのテーマ、ドラマについて、ネット動画について、バラエティについてをほぼ3等分で時間を取っていた。そこで思いつくまま番組の中で語られ気になったフレーズを記していく。

「ネット動画制作者はテレビ番組制作者より数字を気にしている」

もちろんテレビ番組制作者も視聴率を強く意識して作っていることは間違いないが、ネット動画制作者はフォロワー数がメシの種なのでもっとシビアに影響される。だから、テレビ制作者の環境とネット動画制作者の環境はかなり違う。どうしても地上波の危機という文脈で僕らは考えてしまうのでテレビ制作者の困難な状況を考えてしまうがネット動画制作者の厳しさを知った。確かにそうだ。制作の自由度はネット動画側の方が低い。ターゲットの興味に合わないと見向きもされないからだ。

「再放送やネットでの収入も考えた上で番組制作費を決めたらどうだろう」

「あな番」がシーズン2になって視聴率がどんどん上がっていったのが典型だし、「ドクターX」や「相棒」のようにシリーズものは高い視聴率を安定的にとった。バラエティでは新番組は好きな番組トップ10には出てこない。つまり、新番組は簡単には視聴率をとれないのが今の時代。若い層はネット動画に動いており、新しい番組に飛びつく人は少なくなった。しかし、SNSや口コミでザワザワと話題になり、シーズン2で開花したのが「あな番」。日本テレビでは25年ぶりの2クールドラマ。バラエティで言えば、タイトルは同じでも内容は大きく変わって視聴率が取れるようになっている番組も多い。つまり、視聴率が取れるには時間がかかる。そしてドラマで言うと1クールだけで考えずに再放送などの2次使用も含め制作費を大きくし番組の充実度を上げることが大切ではないかという提案。どんどん制作費がシュリンクしていく今、新しい考え方だし再放送の積極的編成をもっと考えるべきだと思う。

「ワインのソムリエのように番組のソムリエのような存在があるといい」

地上波の番組だけでなくNETFLIX、Hulu、プライムビデオ、YouTubeなどのネット動画が出現し今の時代は山ほどのコンテンツがあり、自分の感覚でアタリを見つけるのは至難の業。以前はテレビ雑誌や出演者情報で事足りたが、そういうわけにはいかない。そこで番組批評の需要があるのか。テレビ東京の佐久間氏は「局を越えて番組やネット動画、映画、ステージなどを語る番組が毎週、あるいは隔週でできないか」と言っていたが、全くその通り。僕も中京テレビのネット動画チャンネル「Chuun」を作った時 同様の企画を提案した。これだけテレビ番組がありながら番組批評の文化が存在しないのは不思議だなと思っていた。テレビは一回性のものだからコンテンツ評価してもあまり意味がないとしてきたが、ネット動画が始まり見逃し視聴もできるようになったのでコンテンツの質的評価の需要が出てきたのだと思う。そういう意味では「テレビの旋風」はこのエリアの番組評価文化を作っていくために貢献していきたいと思った。

まだまだ「全裸監督はアメリカのマフィアものの作りと同じで麻薬をアンダーヘアに置き換えて作ったと思えばわかりやすい」と目からウロコが落ちるような指摘など興味ある話題は数多くある。この番組はNHKの再放送が必ずあるだろうからテレビ関係者は必ず見ると今のテレビ事情がよくわかる。そういえばNHKは再放送がよくある。BSで放送したものを地上波で流したり、積極的に再放送を考えている。一回の放送番組と考えないでストックコンテンツと考え発想の転換をしたら良い.。いろいろな放送枠に視聴者はいるので編成をうまく考えることは大事なコンテンツをよりよく生かすことになるのだと思う。

厳しい時代ではあるが智恵を出し闘っているテレビマンがたくさんいる事もよくわかった。このエリアでもきっとそうだろう。まだまだ面白いことが出てくると期待する。

 

柴垣邦夫