東海テレビ 権藤 ゴンドウ 雨、ごんどう~壊れた肩が築いた〝教えない教え”~

  • 番組名:権藤 ゴンドウ 雨、ゴンドウ ~壊れた肩が築いた〝教えない教え”~
    • 放送局:東海テレビ
  • 放送日時:2019年12月28日(土)16時50分~17時45分

年末何気なく見ていたら、ずいぶん愛情あるつくりの番組を見た。それがこの番組。全編に野球選手であり投手コーチ、監督として活躍された権藤博さんに対する尊敬と愛情に溢れていた。小利口に制作テクニックを駆使する番組が多い中、番組制作者のド直球の気持ちを込めた番組だった。だって、番組タイトルもやたら長くないですか?「権藤 ゴンドウ 雨、ゴンドウ」という秀逸な新聞の見出し言葉と「教えない教え」という番組テーマ、さらに権藤さんが活躍は短かったという歴史を一気に番組タイトルに入れてしまうのだから、面白い。器用にまとめるより気持ちが溢れていて、そこが最近になく気持ちよい視聴感につながる。

昭和36年から2年間で65勝というとてつもないエースとして中日にいきなり登場した権藤博投手。登板過多で肩を壊し投手生命は絶たれるが、しばらくして指導者として登場、幾多の名投手を育て、監督として日本シリーズの優勝監督にもなった。そしてWBCでも投手コーチとして世界一に導く。そして81歳になった2019年野球殿堂入り、年末にその祝賀パーティがあった。それを契機に今回の番組化。権藤さんの歴史を東海テレビの潤沢なアーカイブ映像やエピソードをふんだんに入れて描いていく。

そして、王貞治、阿波野秀幸、吉井理人、ロバートローズ、野茂英雄、佐々木主浩、小久保裕紀、谷繁元信など野球界のとてつもないレジェンドたちが口々に権藤エピソードを語る。そしてCM入り前にみなさん「権藤 ゴンドウ 雨、ゴンドウ」とつぶやく。愛情たっぷりの登場者だし、演出だ。みんな権藤さんに敬意を持ち、尊敬し、野球理論に一目を置き、権藤さんを称える。でも一番権藤さんにぞっこんなのはプロデューサーである森脇淳氏。長年スポーツアナウンサーとして東海テレビで活躍されてきた方だ。ただ、その森脇さんがナレーターを三宅民夫さんにしたのは何故だろう?ご本人でもいいし、自局のアナウンサーでもいい。確かに三宅さんのナレーションは暖かいしお上手だ。

権藤さんは優勝した時投手コーチとして貢献したが、監督とよくぶつかり合って翌年退任したこともある。そんな激しい一面もある権藤さんが自身のこれまでの生き方を問われると、「権藤博はねえ 苦しんだけど思った事は遠慮しながらも、やって来たね。遠慮したけど 他人よりやれたと思う」と振り返るシーンが最後の締め。「遠慮したけど やることはやって来た」という素晴らしい人生。この番組も遠慮しながらもやりたいことをやっている。作り手の気持ちが溢れた優れたスポーツ番組でした。

柴垣邦夫