「池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ」(メ~テレ:報道)

  • 番組名:「池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ」
  • 放送局: メ~テレ(名古屋テレビ)
  • 放送日時:2020年8月30日(日曜)午後3時20分~午後4時25分

池上彰とメ~テレ報道局災害取材班による防災の日周辺での特番も今年で9回目を数える。その間書籍を出版するなど、啓発活動はエリアの「定番」になった感があり、こうした番組の使命を果たしているといえる。

折しも今年は「東海豪雨」から20年という節目に当たり、かつ7月には球磨川や飛騨川沿いに甚大な被害をもたらした水害に見舞われている。近年、毎年繰り返す短時間豪雨、巨大台風、停電、水害・・・。視聴者にとって、自然災害は残念ながら非常に身近かになっており、この種の番組や日々の報道番組での報道の役割は重要さを増している。「今年もまた同じような特番か」といわれそうだが、しつこく制作し続け、啓発を継続することがローカル局の使命であろう。池上も中スポの取材に対し、全国ネットよりローカル局の方が細かい指摘が出来るという趣旨の発言をしている。

更に近年の特徴として、報道のカメラが現地に行く前に視聴者がスマホで動画を撮りデータを局に送稿してくるというスタイルが確立し、映像の幅が広がったという点も上げられる。

さて、つい先月の水害を池上自身がメ~テレの報道ヘリに乗り上空からリポートするシーンを冒頭に据えて、視聴者の直近の記憶を呼び起こす。ここから東海豪雨による水害の振り返り、名古屋市内の実に37%が水に浸かったという事実の確認、当時と今の共通するポイント(線状降水帯、ボトルネック、バックウォーター現象)についての解説と進む。スタジオではジオラマやイラストフリップなどに加えVTRで専門家の意見を挿入するなど立体的な報道が出来ていた。この中で豊田市の豊田スタジアム近くも実は東海豪雨の時にひどい浸水に見舞われていて、その原因となったボトルネック(鵜の首)について国が現在川幅を広げる工事を進めているという情報は新しい気付きであった。

バックウォーター現象についても7月の豪雨で被害が出た飛騨川と支流・白川との合流点で実際に起きた現象を解説し、その危険性を指摘した。普段から自分の家に潜む自然災害の(水害や地震)の危険をハザードマップなどで確認しておくことの重要性を学び取ることが出来る仕組みだ。さらに番組ではコロナ禍で避難方法についても新たな対応に迫られていることを指摘する。自治体の対応も柔軟性、即応性が要求されるということだ。

ついで番組では南海トラフ巨大地震に話題を変え、筆者もよく理解していない「事前情報」について分かりやすく解説した。片割れしたときの1週間の事前避難が妥当かどうか、ゼロメートル地帯である愛知県弥富市を取材し、問題点や自治体の悩みを取材した。名古屋市を筆頭に多くの自治体がこの事前避難についてのルールを決めていないという。この辺りの不安は共有出来たが、名古屋市の担当者の意見も聞いてみたかった。

番組は最後に避難の際に考えられる車中泊について、実際に軽ワゴンをスタジオに持ち込み、その有用性や危険を指摘した。

スタジオゲストは去年・一昨年と同じメンバーだった。災害について素人だったゲストも3年目となると知見が蓄積され井戸田潤のコメントも笑いは不要の妥当なものになっていたのが素晴らしい。同じようなことでも繰り返せば知見となるという証明ではないだろうか。

来年は番組10年だ。この番組の良いところはジオラマやイラスト、実物、現地、というリアリズムを追求し、分かりやすさを信条としている点だ。地震か台風・水害・酷暑とネタは限られるのだろうけど、メ~テレ報道局にはこの手法をブラッシュアップし、毎年警鐘は鳴らし続けて欲しい。質の高い防災減災番組だ。(KING)