’21年版「○○に10万円あげたらこんな使い方されちゃいました 第6弾」(CBCテレビ・バラエティ)

  • 番組名:「○○に10万円あげたらこんな使い方されちゃいました 第6弾」
  • 放送局:CBCテレビ(全国28局フルネット番組)
  • 放送日時:2021年1月3日(土曜日)午後3時から午後3時55分

この番組もこのところ正月特番の中では楽しみしているものの一つだ。「10万円消費ドキュメント」と番組自身が称しているように、そのドキュメントタッチが好みだからだ。このテイストは「さんまのからくりテレビ」の「ご長寿早押しクイズ」や「ビデオレター」コーナー、また「あんたの夢叶えたろかスペシャル」と言った素人の面白さを引き出すものとの共通性があるな、と今さら気がついた。つまり発想の原点は新しくはないのだが、そこに10万円という絶妙な額のお金を持ってきたことが成功の秘訣であろう。本作でもう6作目となる。

昨年も「五島列島の兄弟の仲直り篇」や「タイのボランティア白バイ」の話はとても面白かった。(と、このサイトにも書かせて頂き、第6弾への期待も持った) 今年はコロナ禍でロケ(特に海外ロケ)がしにくくなっているという逆境もあっただろう。前回は「リサーチに2ヶ月かけた」とHPにあったが、今回はどうだったのだろう。取材ネタを集めるにも苦労したのではないか。というのも、スタッフには申し訳ないが、前作と比べると相当パワーが落ちたと言わざるを得なかったからだ。コロナのためにリサーチ数が減ったかな、という感じだ。(良いネタに遭遇するチャンスが減ったという推測)

大きなネタは2つ。大阪の包丁店(ここのオーナーはカナダ人の包丁フリークで、かなりの有名人。「マツコの知らない世界」にも出演していた。)この店に勤める修行3年目の女性に10万円を上げたら、オリジナルの包丁を作った、という下りが一本目。堺の包丁職人を訪ね、ベースとなる包丁用の鋼の原型を買う。それが「本鍛錬・ダマスカス」という多くの鋼を重ねて鍛錬した包丁の原型で、これを磨くと、えも言われぬ模様が刃先に浮かび上がるという逸品。しかし、3年目の彼女は包丁製作をしたことが無く、6万円かけた素材をフイにしてしまうところだった。まだまだ未熟で殆どが職人の手を借りていた。また柄の部分は鹿の角で作りたいということで、京都美山町まで出かけ素材を仕入れて来た。これもほとんどが熟練の職人の手を借りていた。

まあ3年目の未熟者だから仕方がないのだが、「自分のオリジナル包丁を作る」という過程において自ら手を下すことがほど出来ないのならば、もう少し別の見せ方があったのではないか。たとば6万円で買った「本鍛錬・ダマスカス」をいきなり研ぎ出すのではなく、やったことがないのなら、安いやつで基礎を勉強し、自分がとても「本鍛錬・ダマスカス」に手を出す技量ではないと悟る、とか。

また2つ目の大ネタは芸人だ。当番組にとって、この手のネタは「禁じ手」だと思う。やっちまったなあ、と感じた。一応の撮れ高は読めるが、二度と使えないだろうし、使って欲しくない。自衛隊に10年間勤め、以前から持っていた芸人になる夢を叶えるために隊を辞めて吉本入りして3年。彼女に10万円あげたところ、女性らしいファッションをまとってみたいというのだ。あれあれ。この手はホントによくあるんですけど。

さらに締めの小ネタがかつてベトナム・ハロン湾で10万円あげてソーラーパネルを買った水上生活者の後日談。水上イカダに作った小さな家の屋根にパネルを貼ったところ、世界遺産の中の景観を壊すので撤去しろ、といわれてしまったという。そのパネルを屋根から外し今は所有の漁船に付けて活躍している、という様子を現地スタッフのカメラとスチル写真で構成していた。これもなんだか帯タスキの話題だった。

去年の放送枠は午後4時30分からの1時間だった。今年は箱根駅伝終了直後でSUTも高いだろう午後3時放送開始へと移動した。この出来で視聴率が良かったらホッとしていただくのはいいけど、それは出来の良さではなく日テレ系からの「流れ」を貰ったという事と判断したほうがいいと思う。制作は外部プロダクションで、CBCはPのみ。せっかくの全国フルネット番組、若手の社員の一人くらい演出に放り込めないものだろうか。それに番組HPの内容が全然番組本体に触れていなくて、基礎的なデータを仕入れるのにTBSHPを見なくてはならなかったというのはどうなんだろう。番組冒頭の街角に据えたテントの中で街のいろんな人にいろいろな10万円の使いみちを使う下りが今回のハイライトだった。ヤクルトのタイアップオリジナルCMやタイアップ番宣ばかりを注目してしまった。次回があるなら次回を期待したい。(KING)