オモウマい店

  • 番組名:ヒューマングルメンタリー「オモウマい店」
  • 放送局:日本テレビ系全国ネット 中京テレビ制作
  • 放送日時:毎週火曜日 19時00分~19時54分

ネットニュースで「東京五輪中に高視聴率を獲得した意外なバラエティ番組」という記事があり、その中で特に目立った番組として取り上げてあった番組が8月3日放送の「オモウマい店」。視聴率は12.2%とある。おそらく関東地区の視聴率だろう。

この番組は今年の4月にスタートした全国ネットの新番組で、視聴率がそこそこ良かったのに番組終了が話題になった「火曜サプライズ」の後番組。中京テレビ開局以来初めてのゴールデン枠の営業責任も持った制作番組で、中京テレビとしてはかなりの期待と不安をもって挑戦した番組である。それがスタートから4か月、こんな評判をいただいたと思いうれしくなった。

ヒロミと小峠のレギュラーに旬のゲストが加わり、スタッフが見つけてきた全国各地のおいしいものを安くいっぱい提供する個性豊かなお店の取材VTRを驚いたり喜んだりあきれたりして見ていく。ヒロミたちが満面の笑みで本当に楽しんでVTRを見ている。長年僕はヒロミ君と番組をやってきたが、こんなに笑顔で中京テレビの番組と付き合っているのは初めて。とてもうれしく番組スタッフに感謝する。

「オモウマい店」は金曜19時放送の「PS純金」でここ数年で開花した制作手法がベース。「PS純金」のプロデューサーが「オモウマい店」のプロデューサーをやっているし、「PS純金」出身のディレクターがたくさん参加している。その制作手法とは徹底した調査と粘り強く取材対象と付き合っていくもの。「オモウマい店」ではディレクターやADが取材先の店の仕事をよく手伝っている事がある。個性豊かな店主はとっつき悪い人も多いけど、時間をかけてスタッフとの間に絆や人情ができていく。この番組が取り上げる少しお歳の個性豊かな店主は客に旨いものをたくさん安く食べさせてやりたい人ばかり。儲けがなくても常連が喜んでもらえば店主は満足。そのあたりの機微が実に丁寧に取材されている。

残念ながら、8月3日の録画は消えていたので8月10日、17日の録画を見た。千葉・銚子の魚屋さんや東京・蒲田のおでん屋さん、それに500円か600円の定食屋さんは採算度外視、お客さんにおいしいものを安くいっぱい食べてもらいたい精神のお店というのは以前見た内容の通り。ヒロミも小峠もゲストもこぞって大笑い。そして極めつけがエキサイティングなうなぎ屋の主人。番組3度目の登場で、以前登場したシーン放送時の様子を主人の家で家族が見守る。家族大喜びの中、取材ディレクターは主人から激賞される。そうです、この番組の取材ではディレクターがお店の人から可愛がられる。そして行き着くところは店の手伝い。取材終わりは家族のような別れ。その情感がからっと描かれる。

こんなにテレビで声を上げて無邪気に笑える番組は久しぶりだ。店主の優しい気持ちでやりすぎなサービスや愛情あふれる言動に心から笑える幸せを感じる。

「エキサイティングなうなぎ屋店主」のように一度取り上げたとりわけユニークな店主を放送時の様子を取材することによりもう一度「ハマる」映像を再度使いコンテンツとして成立させていくのは、「PS純金」で確立した「びっくりや四兄弟」の手法。毎回アタリネタを見つけていくよりこうした鉄板ネタを再加工する方法を持つこともうまいところ。「店の営業の傍ら店の収入を補填するためウーバーイーツの配達をする店長」のパートではその店がウーバーイーツ配達人の聖地になっている様子が映し出され、最高の展開。

しかし、かなりの日数お店に密着取材するわけでコロナ禍の今の時代、かなり苦労も多いと推察する。さらに長時間労働の問題もある。そういう環境の中で面白いものを作っていく根性は大したものだ。でも今の世の中躓く災いは山ほどある。細心の注意をしてさらに面白く続けていってほしい。

柴垣邦夫