画のチカラを考える。CBC「絆画 亡き人と紡ぐ未来の思い出」

放送局:CBCテレビ
放送日時:2022.3.20(日)25:25~
番組名:伝える’22「絆画 亡き人と紡ぐ未来の思い出」

 願いを叶える絵師・大村順氏(37)は、亡き人と残された人の「あるはずだった未来」をまるで家族写真のように1枚の未来想像画に仕上げる。この似顔絵作品は、「絆画(きずなえ)」と呼ばれ、亡き人に思いを馳せる家族などからの依頼により5年間で250枚も描かれた。番組で紹介された4組の依頼者は皆、彼に心から感謝しているようだ。大村氏の人柄は誠実で、依頼者が亡き人にどんな思いを抱いていたかを細やかに探り、叶えてあげたかった夢を絆画の中で見事に開花させている。成人式に晴れ着姿で凛と立つ娘…。希望の職業に就くことができ、両親と微笑む息子…。どの作品も穏やかで温かい。
 とても素敵な話だ。だが、どこか拭い去れない不安も残る。ひとつの「供養」の在り方を示す一方で、場合によっては、遺族の気持ちの切り替えを妨げてはいないか?(自死の娘の画を2年にわたり依頼した方もいらっしゃった…。)この矛盾を番組では深く掘り下げていなかったが、終盤で大村氏のもうひとつの活動について少し紹介されたため、彼の葛藤と気持ちの整理に向けた努力を垣間見ることができた。その活動とは、小中学生に「命の授業」なる講義を行い、遺族に重い後悔を与えぬよう生きる大切さを説くこと。
 大村氏は、友人や自身の子の死を経験したからこそ、似顔絵師を真に人のために尽くす職業にまで昇華させることができたのだろう。若くして良い道を見つけたと思う。脱帽。

中島精隆