- 番組名:「トガリビト 熱量に、ふれる」(第3回)
- 放送局:CBCテレビ
- 放送日時:2024年12月7日(土曜)午後5時~午後5時30分
すっかり好きな番組の一つになっている。ローテーションもおおよそワンクールに1本ということも分かった。次回は3月か?初回は主に制作フォーマットについて書いた。2回目は、構成や人について書いた。3回目ともなると、中身についてしっかりと味わうことが出来たので、そのことについて書いてみたい。
今回は新幹線ではなく、在来線を使って愛知県は半田市へと出かけた。出会った「トガリビト」は、私もその名を聞いたことはある日本酒「敷嶋」を作っていた(いる)伊東株式会社9代目伊東優氏だ(若い!)。この番組の醍醐味は、インタビューの聞き応えと、主人公にまつわる劇的な事情だ。初回の豊橋の前掛け屋さん、2回目の浜松のピアノメーカーも主人公のまわりに起こる状況の劇的な展開に驚きもし、感心もするという仕立てが心に刺さる。
今回の9代目伊東さんも、過去二回の主人公と同じく、脱サラ組。元々はNTTドコモの社員だった。清酒の需要低迷などが原因で祖父の代で廃業してしまった銘酒「敷嶋」(天明8年、1788年創業)を再興を決心し、実現するまでのドラマチックな顛末は、ほとんどの視聴者に「俺にはムリだ」と思わせる迫力がある。そこがこの番組の面白さなのだ。「トガリビト」の「トガリビト」たる所以に、視聴者は、「よくやるよなあ」と魂消るのだ。
そして、もう一つこの番組の面白さに人との出会いが人生の転機になるんだな、ということを認識させられる点がある。清酒を醸造するには国の免許が必要で、一旦返納すると、昨今の清酒事情から新たに免許が降りることはなくなっているという。どこかの酒造メーカーが廃業し、譲ってくれる免許を待つしかないのだった。伊東さんは委託で酒作りを続けていたが「敷嶋」で醸造免許を持ちたいと、あの手この手で廃業しそうな酒屋さんを当たるが難しい。そこに一人の清酒ファンが現れ、短期間のうちに免許を譲る酒屋さんを見つけてきて仲立ちしてくれるのだ。そういう事があるんだなあ、とここでまた感心。「天は自ら助くものを助く」という言葉が浮かぶ。
「敷嶋」の復活の顛末と伊東さんの人生の劇的な歩み。ハードとソフトが上手く融合して30分が構成されている。ナレーションの部分とインタビューの割合も良い感じだ。今回は「敷嶋」の伊東株式会社が酒蔵を改装して(このくだりで伊東合資会社が銀行もやっていたことが分かる)日本酒に合う料理も提供するスペースも作ったので、あえてグルメを取り上げる必要もなく、流れを良くしていた。
ちなみにさすがはかつて取った杵柄、元NTTドコモ社員が社長の会社だけあって「敷嶋」のホームページはオシャレでよく出来ている。歴史も詳しく書かれているので一度訪問されたらどうだろう。
さて、こうなると、どういう「トガリビト」を見つけてくるか、が番組成功の鍵となる。3月?の放送が今から楽しみだ。そして来シーズンも続くことを祈っている。(KING)