放送日時:2025.5.19(月)0:55~
放送局:東海テレビ
番組名:大衆短歌バラエティ 世み詠み
大衆短歌という着想に惹かれ、視聴してみた。一般人の短歌を通じて世の中を知ろうとする番組だ。歩きながら歌を詠む「街ブラ短歌」という手法も一興。しかしながら印象を問われれば、全般にクセのない無難な仕上がりになっており、苦言を許していただけるなら特に意外な発見もなかったことが残念。
「こっそりと心の中にしまってる~」という上の句に自由な下の句を考えてもらう「付け句」遊びは、人々の本音を探るのに適したオープニングだ。番組では「~次の自動車ランボルギーニ」と下の句を詠んだ男性の自宅へ同行し、2台の高級スポーツカーを見せてもらっていた。この方は技術職で、趣味の自動車については後部の見栄えを大事にしているとのことだが、欲を言えばもっと踏み込んで彼の人生観が浮き彫りになるコメントがほしかった。また、都心から離れ、日間賀島の漁師と幼い息子を取材したのは職業のバリエーションに配慮してのことだと思うが、息子が詠んだ「~パパを越える漁師になりたい」という下の句を感動につなげるには、漁師ならではの苦労が伝わる映像または父子のやりとりがあると良かった。そして、プロ歌人・鈴掛真に指導を受けながら大須を回遊した芸人・蛙亭イワクラのコーナーでは、彼女が詠んだ「あんトースト」の歌が秀作だったが、これについてプロ歌人がもう少し具体的な批評をしてくれれば視聴者の満足度が上がったと思う。
企画・構成が悪くない割に随所に物足りなさを感じてしまうのは「なるほど」と思わせるエピソードや解説が不足していたからではないか。アイデアを最大限に生かすには、やはり要所での深掘りが大切だと思う。周囲のオヤジ連中の声にも若干耳を傾けながら、是非また第2弾に挑戦していただければと願う。
中島精隆