- 番組名:「トガリビト 熱量に、ふれる」(2025年9月6日放送分)
- 放送局:CBCテレビ
- 放送日時:2025年9月6日(土曜日)午後4時30分~午後5時
ワンクールに一度訪れるお楽しみタイム。今回は石都岡崎の石屋さんだ。これまでこの番組の演出手法について色々書いてきたが、今回は主役たる「トガリビト」から何を感じてきたのかに触れてみたい。
今回で6作目になる。登場する6人に共通することがいくつかある。まず若い時の苦労や挫折だ。多くは家業を継承する中で、悩み迷い決断を迫られる。彼らは若くして人生の岐路ともいうべき重大な決断をする。その決断がたまたま吉と出て今の成功・注目があるのか、他の要素があったのかを重ねて考えさせられる。そこに加わるのが、発想の柔軟さ、目の付け所、アイデアの斬れ味。恐らく若くしてその先の人生を左右する決断をする若者は多いと思う。彼ら彼女らと「トガリビト」の違いは、決断のその後の発想、アイデアの鋭さの有無なのだと感じる。加えて、登場した6人には、身内に、周辺に、(結果的な)成功を影で支えた人との出会いがあった。
以上の点から今回登場の「トガリビト」岡崎の石材店の4代目の若き店主稲垣遼太さんの回を眺めてみる。石材店のメイン商品は墓石。しかし少子化や墓に対する考えの多様化などから需要は漸減している。34歳の若き店主は、石屋を継ぐことは血肉に染みていた。そんな中で高校に入るが、石屋を継ぐなら大学に行く時間は無駄、と思い高校を辞めて石屋を継ぐことを宣言する。そこで登場するのが3代目の父親だった。父は息子に、まずは一年休学して石屋をやってみろ、と。手伝ってみると意外と大変だという事が分かる。このままでは不安だと思いつつ大学へ。卒業すると、父は今度は、まず別の会社で働いてみろと。息子は喫茶店に就職する。こうした時間が後の4代目に大きな影響を与えることになる。石材店に入ったのは25歳の時だ。そうこうしている内にも墓石に対する需要は落ち続け、先行きに不安を感じていた。そこで着想したのが端材を使った食器の製造だったのだ。そこには若いときに回り道をして経験してきた事が役立ったことは明らかである。4代目の着想は周囲を刺激する。
ステーキ用の皿(輻射熱もあり食材が冷えない)、イタリア料理店、寿司下駄、花器、建築物を飾るオブジェと発想は人を呼び、人が発想を呼ぶという好循環が続く。今では様々な食器など、さまざまなシーンで活躍する石の製品が生まれた。マーケットは世界に広がった。4代目は今でも石にどのような使い方があるのだろうか、と日々考えていることだろう。そうした彼の持つ「熱量」が周囲に伝わり、そこで生まれた熱が更に彼を熱くするという好循環が生まれている。その発想の一端は石材店及び彼が立ち上げたブランド「INASE」のホームページを見ると、楽しく触れることが出来る。
これまで見てきた6人の「トガリビト」に共通することがもう一つ。インタビューの受け答えに淀みがなく、語る内容が明解であるという点だ。信念の固さを感じる。そんな「トガリビト」との出会いを楽しみにしている視聴者も少なくないのではないか。(KING)