NHK「ひろがれ!お笑いピースライブ2025完全版」

  • 番組名:「ひろがれピースライブ2025完全版」
  • 放送局:NHK(東海3県)
  • 放送日時:2025年12月6日(土)17時00分~18時

何気なくテレビをつけていたらこの番組に出会った。

MCは千原ジュニアで収録場所は大須演芸場なのでてっきりテレビ愛知の番組かと思っていたが、NHK名古屋の制作番組だった。

3組のお笑いがありがちな外国をテーマにしたネタ見せの番組かと

思っていたら、なかなか実感のある今までにないアプローチの外国人をテーマにしたネタ見せ番組だったのでぶっ飛んだ。

僕も最近のお笑いに詳しくないので馴染みはないのだが、

出演するチャンピオンズやラブレターズ、三拍子はM-1やキングオブコント、THE MANZAIなどで優秀な成績を収めた中堅の実力派。確かにステージは安定している。

その3組が東海地区で暮らす外国人を訪ねて交流し、言葉や文化の壁を乗り越え国を超えた「笑い」を創作し大須演芸場に外国にルーツがある人や日本人を客席に招き披露する番組だった。

これだけなら過去にもいろいろあったと思う。でもこの番組は、

外国(インドネシア、エチオピア、ブラジル)のコミュニティとすごく自然に付き合い、ステレオタイプの描き方ではなかった。

チャンピオンズはインドネシアの家族やモスクに訪れるロケをする。

そこで彼らと触れ合ったチャンピオンズ曰く「人の役に立ちたいという思いがすごく強い」というインドネシアの人たち。町のゴミ拾いをしてたり家での皿洗いはお母さんではなく子供たちがやったり「いいことをすれば神さまに近づく」という教えを彼らは実践している。

僕はインドネシア人は日本の中で愛知県が一番多く住んでいる事は知らなかったし、イスラム教のイメージは厳しい戒律の近寄りがたいものかと思っていたりもしたが、知ればかなり違った人たちだった。完全に僕が壁を作っていた。

チャンピオンズは触れ合って知ったいろいろな文化をテーマに、「最高!」という意味のインドネシア語「バグース」を使い客席にネタ披露。大うけだった。千原ジュニアが言った「リアルな文化を知っていきながら笑わせてください」という高いハードルを見事にクリアした。

次はラブレターズがエチオピア家族と交流し、そして、三拍子が岐阜県大垣市にあるブラジル人学校にロケに行く。それぞれいろいろの文化や食事が紹介され興味深いエピソードがてんこ盛り。

エチオピアでは「一人で食べると一人で死ぬ」という言い伝えがあり、家でも誰かと一緒に食べたいという文化、そしてブラジルでは子供たちがピアスをしたりマニキュアや髪の毛の色をいじってたりしてもかまわず自分らしさを受け入れる文化という事を軸にネタは作られた。いずれも客席は大うけ。

僕が「この番組いいな」と強く思ったのは、取材される側も取材する側も非常にフランクにコミュニケーションしている所。取材される側の警戒感が全くない。やはりお笑い芸人のコミュニティに入り込む技もあるのだろうが、取材スタッフが正面から向き合っての取材だからなんだろう。そして取材される側の人柄もよかった。

知らなかった国の身近な文化がこんなに楽しく表現できて学びもあり、とても秀逸な番組だった。

柴垣邦夫