眩しきかな、父の背中。CBC「イッポウSP コイに恋して」

  • 番組名:イッポウSP コイに恋して
  • 放送局:CBCテレビ
  • 放送日時:2019年4月1日(月)25:25~

「錦鯉を国魚に」と自民党が輸出拡大を狙い、議連を設立したそうだ。
昨今、錦鯉は欧米の富裕層の間でブームになっているらしい。アジアの香りあふれる艶やかさと生きた芸術を育てる職人魂に魅了されるのだろう。その所有者になることができれば、歳とともに風合いが変化する様を目前で堪能することができる。しかし、買い手を本当に満足させるためには、品評会で認められる色、柄、形を有する優れた個体をまず、誰かが育てなければならない。

そんなことのできる名人が、地元愛知の小牧市にいることをこの番組で初めて知った。こうした特殊な職業で成功する人は一体どんな才能の持ち主なのか?番組では彼自身の子育てのスタイルに着目し、二人の息子にカメラを向けながら、父親兼社長である彼の人生観を引き出していた。

彼は、息子たちを幼い頃に海外留学させ、知らない土地での自分の居場所の作り方を学ばせたという。確かに息子たちは、自身のアピールに物怖じすることがない。また「父の仕事を継ぎたい」と揃って発言し、互いがライバルであることも隠さない。息子たちがなぜそう思うのかを探りながら、私は最後まで番組を楽しむことができた。わかったのは、父がこの仕事を根っから愛しており、常に高みを目指してやまないということ。その背中に眩しさを感じるが故、息子たちはこの仕事を継ぎたいと思うようだ。

「難しいけれど、面白い」ことこそ選ぶべき仕事であり、人生を満ち足りたものにしてくれる。長男は、中学時代にこれに気づいたため、高校進学をしなかったという。番組を引っぱる大石アナが、長男からこの話を聞き出せたのは良かった。かつての「若貴兄弟」ではないが、敢えてひとつの道に邁進する姿は、傍から見ていても頼もしい。東大生、京大生の人気就職先ランキングにコンサル会社名が目白押しというご時世だが、リスクを顧みず一芸を極めたい若者が身近にいることに何だか嬉しくなった。

中島精隆