- 番組名:病院ラジオ
- 放送局:NHK
- 放送日時:2019年4月29日(月)8時15分~9時00分
NHKの番組であったり全国ネットの番組を論評するのはこのサイトの趣旨からすると逸脱しているだが、とても良い番組で感銘を受けたので書かせてもらう。
朝ドラを見ていたままNHKを流していたらこの番組が始まった。前回の放送は昨年8月で多分2回目の単発番組。敬愛する放送作家の大岩賞介さんとの食事の席で「テレビの未来」をテーマに語っていた時、大岩さんからテレビの可能性を感じさせるインパクトのあった番組としてこの「病院ラジオ」の話を聞いた。サンドイッチマンが病院に行き入院している人や付き添っていたりする人、医療を施す側の人などを相手に小さな範囲でのインターネットラジオを出前で開設、その様子をテレビ番組とするというものだと聞いていた。是非とも見てみたい番組にGWののんびりした時間に突然出会った。釘付けだった。
今回は東京の世田谷区にある子供に関する様々な病気を診る国立病院が舞台。難病に立ち向かっている子供たち数多くいる病院でサンドイッチマンはラジオを聞いてもらうようにまずチラシを病院内に配りラジオのDJをスタート。DJブースにゲストが来て話を聞いた上でリクエスト曲を流すというのが基本形。紫外線に皮膚がきわめて強く反応してしまうため防護する透明のフィルター器具を頭からスッポリかぶり日傘もさして最初の子供は病院の庭の一角に設置したテント仕立てのラジオブースにやってきた。かなりの重装備にもかかわらず子供は闊達に語る。またある時は、病棟から動けない子供たちが入院している病棟に行き、簡易ブースを構えゲストとして子供や親御さんが思いを語りにやって来た。そして家族や患者さんは病室やロビーでラジオの生放送を聞き、その本音や語る姿を思って涙をながす。
心揺さぶられる素敵な話はいっぱい出てきたのだが、ここではこの番組作りの気構えを語りたい。この単発番組のためにサンドイッチマンは2日間、朝から晩までこの病院のDJブースにいる。かなり売れっ子のサンドが2日間スケジュールを出しこの番組に向かっている。東北大震災も経験し復興に対し力を尽くしてきたサンドは難病に立ち向かっている子供やご家族の想いを感じながら、この番組を引き受けたのだろう。子供を励まそうという趣旨だが一つ間違えた表現をしたら子供やご家族を傷つけてしまうこともあるだろう。そんなセンシティブな現場を彼らはひょうひょうと、そして自然に会話していく。タレントとしてのリスクや心配事より難病に立ち向かう子供の話を聞くことのほうが彼らにとっては大切だった。その覚悟に心の底から敬意を表する。テレビに出る人間として大したものだ。現場には間違いなく温かいものが流れていただろうし、勇気や元気、感謝や労り、いろいろな気持ちが溢れていたと察する。帰る車の中、彼らは「同じ方向に向かっている家族は強いなあ」「人間的に成長させてくれる番組だなあ」「ここに病院があるのは知っていたけど、こういう治療現場だという事は知らなかった。今日会った人たちの事は通るたびに思い出すだろうなあ」と言っていた。
サンドイッチマンを起用した番組スタッフのセンスや覚悟も相当すごい。そして、毎日こうした局面が連続する医療従事者の苦労は並大抵ではない。つくづく感心する。大岩さんが言うテレビの可能性を見事に感じさせる番組だった。引き続きいろんな病院に行くのだろう。期待している。
柴垣邦夫