中京テレビ 真夜中のドキュメンタリー「津波と金魚」

  • 番組名:津波と金魚
  • 放送局:中京テレビ
  • 放送日時:2019/12/27㈮059~

インターネットで紹介されている経歴によれば笠井千晶ディレクターは最初静岡放送入社。そのころ、袴田事件に出会い、取材を始める。
続いて中京テレビの記者となる。(当時、優秀なディレクターが入ったという評判を私も聞いている)そして、東北大震災を取材するために会社の仕事のない休日に東北へ通い続けたとのこと。
そして、ドキュメンタリストとして、袴田事件や東北大震災の取材を続けるため、フリーとなった。純粋なジャーナリストだと思う。
記者時代から、今日まで、いくつもの受賞歴があり、この世界では有名な方だ。

笠井さんが作って、1917年に公開された映画「Life 生きてゆく」で中心人物となっていたのが南相馬市在住の上野敬幸さん。この人物を継続して取材している中から、今回の番組が作られたと思われる。
笠井さんがフリーとなり、監督されたことは知っていたのに、この映画は観ていないので反省だ。

番組の冒頭で映される美しい金魚の絵。透明な樹脂を重ねて作られる作品はまるで実際に水の中を泳ぐように見える不思議な絵だ。これを描いたのが上野さんを訪ねてきた、美術作家 深堀隆介さん。彼は津波の被害を目の当たりにして、芸術家として何ができるのかを考え続ける。
番組は深堀さんが被災者に関わり続けた7年の記録だ。

上野さんが深堀さんに二人の被災者を紹介する。被災者として今も続く哀しみの暮らし。そして彼らの家族の遺品が深堀さんを触発し、その遺品そのものに金魚の絵を描くことになる。遺品は作品となり、家族のもとに贈られ、新たな命を与えられたかのように家族が慈しむものとなる。 

番組としては登場人物が多く、それら一人一人の物語が重く、一方で金魚の絵の美しさに目を奪われ、私は少々混乱した。
ディレクターが訴えたかったのは深堀さんが拘った被災者への関わりで、それは被災を忘れてはいけないという、ディレクターの強いメッセージだと思う。

さて、「真夜中のドキュメンタリー」は土曜深夜枠だと思っていたので、年末編成のせいか、木曜深夜に移動。番組表だけでローカル制作番組を見つける我々には冷や汗の編成だ。制作者や局関係者に情報提供をお願いしたい

澤田健邦。