「新型コロナウイルス報道に思う その3<東海テレビ編>&総括」(在名民放各局)

  • 番組名:「新型コロナウイルス報道に思う その3<東海テレビ編>&総括」
  • 放送局:東海テレビ 他在名民放各社
  • 放送日時:2020年3月16日(月曜)

承前。その1と2で、東海テレビについて視聴出来なかったため、16日月曜に全編を視聴した。その感想と、全体の総括をしてみたい。

この頃、夕方の報道?情報番組をザッピングする機会が増えていた(かつては1局だけだったが)。改めて東海テレビを観たが、在名広域局の中では一番地元色が強い構成だ。出演者もコメンテーターはおらず、3人全員が局アナだ。(高井さんの扱いは未明)ただし、時間は一番短い。「ニュースONE」は月金午後4時49分から午後6時57分まで。中で午後5時53分から同6時13分まで東京からのニュースが挟まれる。

16日は、相模原殺傷事件の一審判決が出た日であり、株価は下げが止まらず、岐阜県では小学校の登校日だった。

第一の印象はHPにも当番組の編集方針が書いてあるが、とにかく地域の人とのふれあいと出来事にこだわるということ。その編集意図は極めて明解で、冒頭から「岐阜の小学校の登校日」「一斉休校の工夫(公園での取材)」これを受けて臨床心理士・小瀬木尚美さんによる親子の生活のリズムの作り方を高橋アナがプロジェクタを使って解説した。

続いて「大府市長選挙」でのコロナ対応での苦労を特集。ここで全国の学校で登校再開したニュースをフジの撮って出しで放送。このVは当日の患者発生にも触れていた。スタジオに降りて、「くらしを守れ」というスタジオ企画。専門家二人に取材(スタジオには出ない)し、「免疫力を上げるには」というテーマで、高井さんと上山アナの進行で紹介した。 一旦コロナ関係から離れこの日この地方で起きたニュースをいくつか紹介。そして5分間の天気情報その1. 豊橋の「ほのくに百貨店」閉店にからみテナントの呉服店の一人の女性に商店を当てた企画が続く。(10分間)そして週替りコーナー「ふるさトーク」。視聴者と電話でのやり取り(この日は電話の調子が悪く、聞き取りづらくて高井さんが苦労していた)。ここまでがローカルのパート1だ。

5時台の視聴者層を意識したローカルネタが並んでいた。午後5時53分から同6時14分までは東京から全国ニュース。ローカルゾーンの2部は、まず地元五輪選手の応援企画。この日は三重の銀行マンが挑むセーリング。約11分の企画。再びコロナ関係に戻り上野アナによる名古屋のクラスターについての解説。続いてフジ制作の企画の撮って出し、「初ガツオとコロナ」(約3分) ついでこの時間の「地域のニュースまとめ」、そして天気情報その2(約5分)「名古屋の幼稚園で卒園式」(約4分の企画) ここまでが本編でCMの後に30秒のクロージングがあって終わる。

この日はこうした構成であった。どうだろう。チャラい芸能ネタ、グルメ、タレント色、一つもない。割り切りが非常に良い。ただ、ゲストのコロナの専門家がいない分他局に比べるとインパクトはいささか欠ける印象だった。ゲストはスタジオに呼んで生で語らせず、記者が取材し検証処理した上でセカンドオピニオンも取って自局責任で放送したのなら見事なものだと思う。ローカルに徹するという編集方針(突発的国際ニュースはフジを掴むのかもしれないが)はここまで徹底しているのはある意味、地味でもいいという腹が括られていて見事だと思った。ただ、他局に比べるとテンポが遅く、私ら年配者にはフィットするが年齢が若いとどうだろうか、という疑問は残った。

さらに高井さんは安定度抜群だが、「コロナ、どうにかならないもんでしょうかねえ」という彼のコメントを受け止めるスタジオジャーナリストがいるといいな、と感じた。この番組はジャーナリスト、大谷昭宏氏が出演する日もあるので、そうしたラインナップが月金続くと高井さんの負荷も減り、番組の主張が出るのではないか。筆者が観るにこの番組は主張をする番組ではないので、編集方針として見切っているのかもしれないが。ただ先週の放送で大谷氏はコロナ患者発生の発表についての名古屋市の対応を批評していたと仄聞するので、そういう名古屋の行政に地元記者が切り込めないスタンスを持って批評するジャーナリスト、ないしは局の解説委員がいると番組が締まると感じた。(芸能人やタレント(評論家と称する一群)は不要)

高井さんは筆者とほぼ同年齢で落ち着き、安定はしているが溌剌さを演出するキャラではない。彼の次をどうするか喫緊の課題だろう。ローカルの夕方ニュースのキャスターは局の顔だ。高井さんはかっての顔であり、今後東海テレビがどうするのか、過去に痛い事件の後遺症はあったとは思うが、編集方針を処理出来る顔を育てることが急務だろう。

総じて東海テレビのこの時間は他局より1時間少ない分、編集方針を明確にして作れるメリットが有り、それをしっかり出して放送している姿勢は大いに買いたい。この稿その2で書いた、各局午後6時15分ごろから設定されているローカルゾーンのあるべき姿だと筆者は思っている。(芸能ゴシップなどを排除したローカルにこだわった編集方針として)。もし東海テレビが各局並みに午後4時前から情報報道番組をするなら、是非、このゾーンの姿勢は守っていって貰いたいと願う。CBCテレビや他局が捨てた編集方針だ。視聴率的には弱いかも知れないが、局の矜持を持たなくて、いざという時に地元の視聴者から信頼を得られるか、ということだ。地元密着的硬派な姿勢は大事だと筆者は信じている。

さてここまで3つの稿に分けて在名広域局の夕方の報道・情報番組のコロナ関係報道を中心に多角的に考察して来た。この時期、各局に望みたいのは「上っ面の情報を疑う」「噂を先導してしまう煽り報道」「差別を助長してしまう情報への姿勢」「この機に乗じたい政権や行政の危ない姿勢のチェック」「当該分野の専門家ではないコメンテーターの発言に対する警戒」「視野を広く持ち、局自身がアジェンダをどう決定するかのチカラを持つ」という姿勢を望みたい。入手した情報に対し、飛びつく前に「裏をしっかり取る、一歩下がる、一呼吸いれる」現場の態度が重要だと思う。

一番大切なのは「多様な意見を正確に処理する現場の努力」「情報はまず疑うことの原則に立ち返る」こと。

それでなくてもネット民からは「大本営広報機関」と揶揄されている現実が、なせ起きていしまっているのか、絶えず胸に手を当てて考えていて欲しい。

自らの体調も整えつつ、未曾有の事態に冷静かつ合理的に取り組んで頂きたい。大変だと思う。在名の報道マンはみな優秀だと信じている。頑張れ!名古屋の報道マンたち!(KING)