「全力!青春ダンス」(メ~テレ:ドキュメンタリー)

  • 番組名:「全力!青春ダンス」
  • 放送局:メ~テレ(名古屋テレビ)
  • 放送日時:2020年9月27日(日曜)25時30分~26時25分

このサイトが始まってから3年が経とうとしているが、筆者がメ~テレのドキュメンタリーについて書くのは恐らく初めてのことだと思う。かの局の情報が入りづらいのだ。新聞のラテ欄などをたまたま見ていて気がつく程度で、名古屋テレビ関係者の皆さん、是非特番情報をお知らせいただきたい。

メ~テレのHPを見ると、「メ~テレドキュメント」という枠は随分と伝統のある枠(不定期)で、本作が175本目になるようだ。放送日時を眺めると、だいたい連盟賞地区審査に合わせた放送と思しき編成が並んでいる。本作は時期的にはそうでもなさそうで、コロナ禍にあってのタイミングを見計らっての放送だったように思えた。

さて、今年は甲子園を始めとして、全国の児童、学生らの部活や大会の発表の場がコロナで奪われてしまい、多くの若人が涙した。その様子は折に触れてテレビなどでも報じられてきた。本作も、その中の一つ。時間を掛けて追いかけてきたものの纏めとしてこの時点での放送となったのだろう。

主役は松阪市にある県立三重高校のダンス部「シリアスフレイバー(男女混成)」の諸君の話である。「チア☆ダン」にストーリー的には似ている。(映画はチアダンス部だが)。筆者はダンス部のコンテストについては不勉強なのでネットなどで調べると「日本高校ダンス部選手権」(産経新聞・フジテレビなど主催)と「全国高等学校ダンス部選手権」(エイベックス・グループ主催)が大きいもののようだ。優勝常連の大阪府立登美丘高校(バブリーダンスで有名になった)、同志社香里などが強豪校として知られている。この番組冒頭で三重高校が優勝するのは「環境大臣杯 全国高等学校Re-Style DANCE CUP」(イオングループが後援しているみたいだ)という大会である。いまやいろんなダンス大会があるんだなととりあえずは納得。

閑話休題。進学校としても知られる三重高校にも優秀なダンス部がある。この部をここまで引き上げてきたのは同校のOBでありダンス部の前身のサークルで活動してきた顧問神田橋純教諭の存在が大きい。

番組は10ヶ月に渡り「シリアスフレイバー」の活動を追った。この間に起きたことといえば、やはり「コロナ」である。ダンス部は、この3月の春休みにニューヨークのアポロシアター「アマチュアナイト」に出演する決意をし、クラウドファンディングや寄付を募り、1200万ほどの資金も集めることも出来た。こうした中でおきた「コロナ」。休校になり集まっての練習もままならない。そして3年生には受験、卒業がせまる。番組ではこうした節目を丁寧に追い、コアとなるキャプテンや顧問の神田橋先生のコメントでドキュメントしてのストーリーを綴っていく。

この種の話は今年、日本中に溢れていたのではないか。「時期が悪かった」ではなかなか学生らの気持ちの整理はつかないだろう。人生における大事な大事な1年が奪われた事は、筆者らロートルの1年とはわけが違うのであって、本当に可愛そうに思う。取り返しのつかない貴重な青春の時間を奪われた彼らの切歯扼腕に思いを致さざるを得ない。高校生らはウェブでオンラインダンスを工夫し全国を巻き込んだ動画を作ったりして、逆境の中でなんとか新しい地平を開こうとしている工夫も描かれた。そのこと自体は素晴らしいと思う。

しかし、この番組を見ていて強く感じたのは、やはり人間は触れ合い、ハグしあい、握手し、顔と顔を合わせて涙を流すことが何よりも大事だ、ということだ。集団になって汗を飛び散らして思い切りダンスすることが、優勝すればみんなで抱き合って喜ぶことが本来の人間の姿なのだな、ということの再確認だった。マスクをする前の生徒たちの姿のなんと生き生きとしていたことか。

本作の中でダンス部の高校生らは悩みはするが、決して弱音を吐かない。その辺りを番組が捉えていたのは良かった。彼らの目は常に未来を見ているのだ。ニューヨーク公演は次年度に繰り越されたが、彼らのパフォーマンスがアポロシアターで見られるように状況が改善されていることを望むのみである。

番組を総括すると、先にも書いたように、体育会系やブラバンや合唱など文化系を問わず高校野球を始めとして学生・生徒が同じ様な思いをした物語がたくさん報じられてきたため、「同工異曲」な感じがしてしまった。長い時間を掛けて追いかけた努力は評価したいと思うが、ユニークなメンバーに焦点を当てるなどすればキャプテンと顧問だけに終わらない物語の広がりが生まれたのではなかっただろうか。(KING)