放送局:CBCテレビ
放送日時:2022.3.30(水)21:00~
番組名:「偽りのアサリ~追跡1000日産地偽装の闇」
食品への信頼を揺るがすカラクリを暴いた報道特番。中国産のアサリを熊本産と偽装表記し、長年、全国に出荷していたという悪質な事件を扱ったものだ。温暖化で漁獲量が減った為、有明海の漁民らが生きる手段としてこれを習慣化してしまったようだ。
3年にわたる取材と報道によって県知事や農水省役人の問題意識の低さは変化し、その後、規制が強化されたとのこと。ひとつの成果であり、番組からは制作側の強い正義感が伝わった。しかし、どういうわけか、後味の悪さが残る。
偽装の悪習を明るみにした結果、救われたのは一体誰だったのか。番組では、自らの悪習を断ち切ろうと新たな取り組みを始めた取材対象者を軸にしていたが、彼の心模様は充分描き切れていなかった。
さて、彼以外に救われた者がいるとすれば、愛知と中国のアサリ業者だろうか。前者は、高くても愛知産が市場に出やすくなった為…。だが、こうした証言は番組内で紹介されていない。後者は、この一件で中国産の味が悪くないと認知された為…。だが、一方で今後の対日輸出高が減ることが予想される為、むしろダメージと捉えているかもしれない。
偏りや過剰演出があってはならないが、「調査報道番組」においても制作者独自の視点とメッセージをはっきり打ち出した方が、視る側も気持ちを整理しやすいのではなかろうか。
中島精隆