- 番組名:あたらしいテレビ
- 放送局:NHK
- 放送日時:2023年1月1日
年初にNHKで放送される最近のテレビ番組事情や映像コンテンツの未来を考察する例年の番組。
いつも楽しみにして見ている。ここでは番組批評ではなく番組を見て触発されたことを記す。
最初の企画は番組スタッフが一番会いたい人8人に2022年出会った印象に残った番組を聞く。
まずこの8人だが僕が名前だけでも知っているのは6人。アニメ界は全然詳しくないので辣腕の製作者は知らないし、コスプレイヤーのえなこがこういう番組に出てくるとはびっくりした。
また、回答された番組も僕が見てなかったり知らなかったりで自身を少し恥じる。番組内では出てこなかったが番組HPによると8人が各3本挙げていて、つまり24本が掲出されていた。その中で地上波は7本、配信は9本。配信番組の躍進がすごい。他は映画が3本など。
続いては、地上波テレビの若きクリエイターによるトーク。SNSではすごく話題になるが視聴率は限りなくゼロに近いというつわものもいた。
このトークで特に印象に残った話の一つは「局内では『成立』という言葉が一番行き交う」ということ。企画書上で面白さを表現するために企画をどんどん狭めている。「成立」とは企画を予定調和の世界に封じ込めることだ。視聴者のつぶやきを気にし過ぎないことも大事だという。つまりつぶやいた人の方に企画がすり寄っていくという心配を言う。制作者が目指す面白さを貫けということ。僕も編成局長の時、「成立するにはこの要素が必要」とかよく言ってたことも思い出す。編成を説得するため、営業を含めた社内を納得させるため企画はどんどん丸くなっていく。瑞々しい表現で話題の連ドラ「silent」は新人脚本家の起用が注目されたが、これも連ドラを最後まで書ききるには新人では無理という定説を破ったものだった。「成立」するにはどんどん冒険はしなくなっていく、その流れでは画期的なものは生まれない。成熟社会の行き詰まりが番組制作現場にも大いにある。
また、「40代以上の人がテレビの将来性はないと言うが、20代の制作マンはテレビにはまだやれることがある」と言う。スタジオでうけた佐久間氏は「テレビの黄金時代に入社した年代は全盛期と比べると将来性がないと感じるが、最近入社した年代は覚悟して現場に入って来ているので感じ方が違う」と解説した。たしかだと思う。テレビ局にコンテンツ産業としての魅力を感じてきた者しかテレビ局の社員として許容できない時代になってきたんだろう。
編成であり経営の職にある者に強くお願いしたい。テレビ業界を活性させるには意欲的なコンテンツを生むことだ。意欲的であるためには定説を打ち破る冒険心が必要だ。現場を信じ現場の意気をあげる編成と現場の関係、経営と社員の関係、またその信頼にこたえる現場のプロ意識と技術。こうしたお互いの切磋琢磨が「将来性がない」といわれるテレビ業界の底力をみせる方策ではないかと思う。
局を離れた今、僕は系列に対するこだわりは薄れた。キー局の系列より名古屋というエリアをより強くする方が大切だと思う。だから地元制作番組は頑張ってほしいし、地元イベントは頑張ってほしい。事業告知などは主催局だけでなく地域全局で支援するのも一策だと思う。地元の文化度向上に少しでも貢献するためにはイベント参加者が他のエリアと比べて多いことが地元パワーを強め勢いが生まれていく。そんな好循環を考えなくてはいけないほど単一のテレビ局パワーは低くなっているのではないかと感じる。
スタジオには毎回テレビ東京出身のTVプロデューサー佐久間氏が出演している。コンテンツの知識や分析そして実行力が抜きん出いる人物だがNHKに現役の時から出演し続けているのも一つの事例ではないか。タブーなんて自分たちが縛っているんだと再確認しよう。
話が「テレビ局の未来」まで飛躍したが、いろいろな局面でやれるトライはまだまだいっぱいあるのではないか、現役諸君!
この番組はこんなことまで妄想させた。
柴垣邦夫