<バラエティと組織>
HTBの藤村エグゼクティブディレクターの話を聴けるというので先日「クリエイティブNEXT」というインタビュー番組をインターネットで視聴した。
藤村氏は、30歳の時(’95年)に立ち上げた「水曜どうでしょう」を演出してきた著名なディレクターだ。「企画書は書くな!」「会議はやるな!」というのが氏の信条であり、その理由は、説明できないことの方が面白いからだという。一理あり。今まで誰も思いついたことのないひらめきや自分でも予測できない展開に潜むワクワク感を文章で伝えるのは難しい。「サイコロの旅」という企画も「勝手に始めた」とのこと。スタッフ間のコミュニケーションは大事だが、会議とは承認を得る場であり、クリエイティブな場になりにくいというのが氏の弁。
しかし、待てよ。組織の中で後進を育てるのに企画書も会議もなしでは、都合が悪いのではなかろうか?かつての長嶋監督のようなフィーリングと熱量で走っていく人の背中を見て、育つ者は勝手に育ってくれということか?いや、氏は後進の育成を放棄したわけでもなさそうだ。指示待ち族は嫌いだけど「これをやりたいが、どうしたらやれる?」といった前向きな問いかけには一緒に取り組む。ただし、チームはまとめず、各人の自主性を大事にした方が強いチームになることを前提にしている。これからは、自走する組織が必要であり「ホウレンソウなどどうでも良いのだ」という。
「社外に目を向けることが最重要。待っていれば仕事が入ってくる時代ではなくなったのだから」と、破天荒な演出家からこぼれた組織論に軽い驚きと嬉しさを覚えながら、私はこの番組の視聴を終えた。
PS.
藤村氏も柴垣さんや私と同じく、番組制作をやりながら労働組合の委員長を務めたことがあるそうだ。きっと、若い頃から活き活きとした組織作りにも関心を持たれていたに違いない。
中島精隆