時を越えて。THK「令和ふるさと紀行」

放送日時:2023年7月30日(日)13:55~
放送局 :THK
番組名 :「名鉄グループスペシャル令和ふるさと紀行」

「ふるさと紀行」の単発が制作されたと聞き、高い関心を持って視聴した。スポンサーは40年以上(1963~2007年)も当番組を支えた名鉄グループだ。時代が一巡した今だからこそ「ふるさと」という人々の心の拠り所について改めて考えてみたいという企画者の思いに私は共鳴できる。

取材対象は長良川鵜飼、犬山祭、日間賀島の日常。番組は、あくまでまっすぐに対象を見つめようとしている。それは、奇をてらわずに腰を据えて取り組んだ丁寧な画撮りと誇張のないナレーションに表れていた。

長良川鵜飼の船上で舞う若い芸妓は、伝統と観光を結ぶ責務に面白さを感じながら成長していく。自然体だ。犬山祭の山車に憧れ、熱心にスケッチをする少年もまた、時とともに街の人々をつなぐリーダーに育っていくのだろう。日間賀島では少子化が進み、学校が閉鎖されてしまうらしいが、父のようになりたいと漁師の修行に励む息子の姿が純粋でまぶしい。

ベテランナレーターの高井一氏はもちろん、地元出身ナビゲーター鷲見玲奈さんの起用も今回の企画意図にマッチしており、成功だったように思う。
途中、随所にモノクロのアーカイブが挿入され、当番組の歴史の重みを感じさせてくれたが、登場人物たちの真摯で受容力のある生き様もまた、過去の映像に引けを取らない力を持っていた。テクノロジーの進化で人々のつながり方が変わった現代でも若者たちは案外、アナログとデジタルをうまく使いこなして自分の道や居場所を見つけていくのだなと思わせてくれる番組だった。

中島精隆