- 番組名:「トガリビト 熱量に、ふれる」(伝説の男 大河原邦男のデザインをプラモ化する)
- 放送局:CBCテレビ
- 放送日時:2025年3月1日土曜日 午後5時~午後5時30分
ワンクールに一度のお楽しみ番組がやってきた。この30分という時間が心地よい。「情熱大陸」もそうだが、ネタとしては1時間は十分に持つものを23分位に仕上げる。この凝縮感と観る方の緊張感の継続がマッチする時間なのかもしれない。恐らく素材はオンエア尺の何倍もあるのだろう。それをどう切るか、がディレクターの腕の見せどころだ。これも入れたい、あの言葉は是非、という思いが溢れることは経験者としてよく分かる。しかし、どこを切ったか、は視聴者は分からない。結果として番組の出来上がりが良ければそれでいいのだ。映画の「ディレクターズカット版」が得てして面白くないのは、編集者の存在の大きさを物語っている。自分に、やっぱり切っておいて良かったと思わせるのは自身の、あるいは編集マンのセンスの練磨によるほかない。今回、印象に残ったのは、1つの話題についてのインタビューを相対(あいたい)する2人の言葉を自然に繋げて、あたかも一つのセンテンスのように編集したセンスだった。この番組は全体として「泥臭い」ネタをスタイリッシュに仕上げるという見せ方からしても、光っていたと感じた。
さて、今回も「どこで見つけて来たのだろう」と思う男の登場だった。幼い頃、タミヤや長谷川、青島あたりプラモに親しんだ筆者には「今はこういう事になっているのか」と目からウロコだった。個人クリエーターが作るメカモデルのプラモ化だ。そういう世界があるのは初耳だった。今回の「トガリビト」はプラモの聖地・静岡で金型会社を経営する宮城島俊夫さん。彼は車の部品の金型を作る会社の経営者だ。子どもの頃からプラモデルに目がなかった。自分の経営する会社で溶けたプラスチックを流し込む金型を作る仕事に取り組みながら、プラモとの違いを思いプラモデルが作れると気がつくまでには時間が必要だった。きっかけとなったのは、日本のメカニックデザイナーの草分け、第一人者と言われ「機動戦士ガンダム」のモビールスーツで知られるレジェンド大河原邦男氏との出会いだった。
大河原氏が業界の集まりに顔を出し、自作のイラストを「みなさんの役に立ててください」と申し出たのだ。著名なモデルは著作権があるので手が出せない。超有名人のイラストをライツフリーで使える機会に、宮城島さんは即応した。ガレージキットを作りフェアに出品した。しかし8個しか売れなかったそうだ。(1体2万5000円)そこから「トガリビト」は一体850円のプラモデルを作り上げていく。そして金型会社を母体とするプラモ会社「キャビコ」を設立し個人クリエーターの夢を実現していく道を歩き始めるのだった。
番組の最後にリポーターの宇賀なつみが「まとめのコメント」を言うが、やはり「出会い」と「チャンスを逃さない嗅覚」に尽きる。ここまでの「トガリビト」は全員それが当てはまる。というか普通の人にも当てはまることなのだ。テレビに取り上げられるような目覚ましさはないかもしれないが、視聴者は自分の身に置き換えて彼らから受け取るものがあるだろう。それがこの番組の魅力でもある。
さて、今回はグルメを取り入れずにスッキリとした。次は5月末か6月初旬か。女性の「トガリビト」の話を聞いてみたい。(KING)