「ハートフルワールド」下野Pに話を聞いた

 

2024年度日本民間放送連盟賞テレビバラエティ部門で優秀賞、ならびに第48回JNNネットワーク協議会賞を受賞したCBCテレビ「ハートフルワールド」の下野賢志プロデューサーにお会いして話を聞く機会があった。

扱うネタが極めてディープで「テレビの旋風」でも数多くの番組批評が出ている。

取材者は一人で現場に行き、そこで時間をかけいろいろな人やシーンに出くわす中、「ハートフル」を探すという番組。この「ハートフル」の意味があいまいであるとこに番組は広がりを持つ。

2023年2月に2本、11月に2本、24年3月に4本、9月に2本、25年3月に4本と不定期に放送はされる。毎週放送することを課せられると内容の質もコンプライアンスチェックも間に合わないだろうから、変則的な編成。それはとても制作陣にありがたい環境だろう。ディープな現場でたまたま出会った人達との交流を追い、そこの現実をとらえるVTR.そしてそれをスタジオでヒコロヒーが一人で観る。

下野さんはまだ40代前半で情報系や営業、報道も経験し、現在コンテンツデザイン局IPプロヂュース部の

気鋭のプロデューサーであり、ディレクターとしても取材しているそう。若い時はダウンタウン世代で、現在の好きな番組も「水曜日のダウンタウン」。バラエティ番組の志向もあるという。

取り囲んだ我らおじさんOBが質問攻めにするので彼の意見が短くなってしまったが、とても真摯にテーマにも取材対象の人にも向き合っている印象。彼曰く、ほかに3人のディレクターを含め4人全員、難しい局面を実直に対応し予測不能の事態にも任せられる取材者だと自信を持っていた。

コンプライアンスにも配慮を払い、番組化することはかなりの力量がいる。こうしたテーマだから取材者と編集者は別でやるのかと思ったが、あるとこまでは取材者が編集していると言う。

ネタ選考はどうやってやるのかと聞くと、場所から入るそう。ディープな場所に身を置いてみてじっくりその場を取材する。事前にネタはつかんでいないし、行ってみて出会ったことに真摯に対応するよう。何がネタになるか、取材者が感じたままで進める。僕らの経験から言うと一人ではかなり危ない。でも、こうした現場を一人のディレクターに任すのだから信頼は相当篤い。よほど精鋭の取材陣なんだろう。だから、毎回番組で軸になる人と巡り合い、その生きざまが何かを訴える。そしてその人たちは間違いなくチャーミングな人だ。その巡りあわせは偶然ではなく、取材者の誠実な向き合いが引き寄せているのだと感じた。ここがとても大事な点。

この企画を編成したCBCテレビの編成もかなり覚悟のある対応。最近のCBCテレビでは「テレビの旋風」でも高評価の「道との遭遇」や「トガリビト」そしてこの番組。いずれも独自性が強く、見る価値がある。こうした番組を生み出していることを称賛したい。

下野さんに一つだけかねてからの要望をしておいた。このディープでハードなVTRをヒコロヒー一人で感想を語らせるのは酷だ、だから取材ディレクターがスタジオで横にいて、聞いたりやり取りができるようにしたらヒコロヒーはもう少し構えずにしゃべれるのでないかという提案。しかし、ヒコロヒーはこの難関を見事こなしているのも事実。

下野さんはとても誠実に語ってくれた好漢。この姿勢が番組作りを支えている。さらに応援したい。

柴垣邦夫