- 番組名:「トガリビト 熱量に、ふれる」(福岡・うきは市キャニコム編)
- 放送局:CBCテレビ
- 放送日時:2025年6月28日(土曜日)午後5時~午後5時30分
3ヶ月に一度のお楽しみ、「トガリビト」。今回は何を観せてくれるのか、楽しみに待っていた。へえ、福岡に飛んだのか。提供社JR東海の範囲外だ。お、マレーシアにロケに行ったのか?広がりを見せてくれている。あるいはもうこのエリアではトガリビトがいなくなったか?期待した「女性のトガリビト」では無かった。
さて、今回の「トガリビト」は福岡県うきは市にある産業機械メーカー「キャニコム」(筑水キャニコム株式会社)三代目社長包行良光(45)さんだ。社是は「ものづくりは演歌だ」。うきは市も「キャニコム」も初耳であった。この会社が作る機械はいわゆるBtoBなので、普通に暮らしている町中の市民はほぼ目にすることはない類のものだ。その正体がすでに目に新しい。故にその開発ストーリー、三代目の苦労話は自ずと興味が向く。24分間に、「創業家の浮かれボンボンが仕事の厳しさに目覚め挫折し苦労し、英語も話せないままアメリカに渡り社業を仕切ることの何たるかを獲得していく」さまが、しっかりと語られていく。
この番組の優れている点の1つは、インタビューの濃さであろう。(スタイリッシュな編集は、もう慣れてしまった)MCの宇賀なつみに何を問わせるか、演出サイドは相当の、しかし適度に絞った情報をインプットしなくてはならない。一方で、相手から初めて聞く時の宇賀の驚きを残しておかなくてはならない。その辺りの調整・打ち合わせが肝になっているな、と感じる。三代目社長の口から出る言葉には全く無駄がなく、「えー、」「あのー」という繋ぎの言葉すらないのは、彼の歩んできた、また今歩んでいる道に対する揺るぎのない信念を感じたのだった。
草刈り機など主に農業・林業分野のニッチなニーズに応える多品種な産業機械の開発と営業の重要なポイントは、この番組にこれまで登場したトガリビト全員に通じることだが「目の付け所の鋭さ」がある。それは「人間を理解する能力」と言い換えてもいいかもしれない。当番組ではそれを「現場のボヤキを聴くチカラ」としている。そこを掘り下げるチカラを持っているのがこの番組のパワーであり魅力なのだろう。本作では主に海外での展開を取材する部分で、そのことについて深堀りを試みていた。
二代目の父親であり会長が製品の名付け親なのだが、乗用式草刈り機「フルーティーまさお」とか、ラジコン式傾斜地草刈り機「アラフォー傾子」などの昭和なネーミングは、筆者はいささか引いてしまったが、40数億掛けた新工場の名前が「演歌の森うきは」であるに至っては、敬服するしかない。そこまで徹底すれば、ダジャレも立派な主張となってしまう。ちなみに筆者が一番気に入った(ウケた)ネーミングは草刈り機「ブッシュカッタージョージJr.草なぎ」だった。
福岡県にある人口27,000人の1%を従業員にかかえて、今や年商100億円を越え、売上の海外シェアは60%に迫ろうとしている。三代目はまだ40歳代半ばだ。まだまだいろんな面白いことを見せてくれるだろう、そんな期待を番組から受けたのだった。さて、3ヶ月後がまたまた楽しみだ。(KING)