- 番組名:「ハートフルワールド(2026年冬編3本」
- 放送局:CBCテレビ
- 放送日時:2026年2月28日、3月7、14日(土)、24時58分~ 30分番組
今やAmazonプライムやNetflixなど5つのサブスクから配信されている狭い範囲に深く届く異色ドキュメンタリーとなった本作の最新版3本がオンエアされた。「テレビではあまり見られない社会の一面を浮き彫りにしている」と連盟賞でも評価されたように配信を意識した創りが、いつもながらのディープな世界を覗かせてくれた。
本作の特色として一箇所に長く取材をかけることにより、特徴的な人物を一人深く取材し「芯」を掘り下げその回の核心的テーマに迫るという手法があるが、今冬放送の3本もその創りとなっていた。
1本目は「東京・ジョフウ編」。赤坂にある女性専用風俗を取り上げた。概要が点描され、セラピストと呼ばれる男性が、さまざまな理由でこの世界に入ってきたことが綴られる。今回のサブメインとなる29歳のHさん(歴3年)は、東大卒のDV父のもとを自分と兄を連れて家を飛び出し育ててくれた母が小6の時に自死するというかなり悲惨な子ども時代を過ごしてきた。彼は起業を志し2000万円を作り父を見返したいという気持ちからこの世界に入ったと語る。彼の優しさにリピーターとなった婦人にもインタビューし彼の輪郭を浮き彫りにしていた。
メインディッシュはこの世界1年半の慶応大卒元エンジニアのSさん(32)。整体が好きでお金の事もあり整体技術を活かしたいと、この道に入ったという。彼にはカルト宗教にハマったことからうつ病を発症し、いまだ洗脳状態が抜けいない母がいる。父はオウム真理教の信者だったらしいが幼稚園の時以来会っていない。彼が整体に興味を持ったのも、母の洗脳を解くことも大きかったという。取材を続けて4ヶ月。再び彼に会うと、母の症状が少し戻ってしまっているという。彼と母との電話での会話から母の妄想幻視の状態が分かる。ひたすら母の事を想う32歳独身青年の心情が心に響く。彼はその後自身の洗脳ヒーリング施術院を開業する。ジョフウは続けるかどうかは分からないという。が恐らく辞めるであろう。彼の母思い、家族思いの姿勢が良く伝わってくる。
本作はこの番組初の女性ディレクターが担当した。コメンテーターのヒコロヒーも語っていたが女性ならではの切込みや相手の心の開かせ方などが出来ていてい成功していたと思う。
3月7日は女性専門の笠松刑務所編。出入りする人にインタビューし、メインディッシュを探す。受刑囚に面会に行く人、刑期を終えて出てきた人に話しを聞くが、オンエアではマジメに応答してくれる人ばかり。恐らくその何倍かに断られたり怖い言葉も投げられたのだろうと思う。さまざなま人生模様、社会の端っこで生きている人たちのつぶやきが聞こえる。インタビューだけ聞いていると人間、根っこは悪い人っていないんだろうなあ、と思わせる。出所者の一人はこれから偏見の目にさらされるのが怖いという。自分は反省し改心しても周りは受刑者犯罪者としか見てくれないのではないかと。虫けら扱いされちゃうと。確かに自分にもそう思う心情がどこかにあるなとハッとする。話を聞く多くの人が複数回刑務所を経験していて中には人生の半分を刑務所という人もいた。一端犯罪に手を染めると抜け出るのは中々難しいのか、いや社会が受け入れる仕組みがきちんとしていないのか。
メインディッシュについては先日中島さんが良い投稿を書かれているので割愛するが、刑期を終えてで出てきた女性と高齢で新婚となる2人が、真っ当な市民生活を生きていけるように祈らずにはいられなかった。ここにも社会の片隅で懸命に生きようとする純粋な心が息づいていることに圧倒される思いだ。
3本目は3月14日。名古屋・高架下編。名古屋都市高速の高架下に暮らすホームレスたちのハートフルに迫った。ここにも様々な理由で社会をドロップアウトした人々のそれぞれの人生ドラマと想いがあった。今回のメインディッシュは自分の家を持つ彼女といたAさん(64)。20年勤務した派遣会社に派遣切りにあい7年前から高架下暮らしという。彼は画を描いたりポスターデザインをするのを得意とし、仲間から「絵描き屋さん」と呼ばれていた。(この才能はどこかで生かせないものかなあと感じた)彼は慈善団体の炊き出しの時に知り合った彼女(60)がいる。彼女は一軒家を持っているのだが、高架下に通ってきて2畳ほどのダンボールハウスでいっときを過ごし帰っていく。周りの目があり自分の一軒家では彼と住めないのだという。自分の家で食事を作ってダンボールハウスに持ち込むこともある。
Aさんはアルミ缶を集めて売り、お金にしている。彼の年齢になるとどこも雇ってはくれないとも。しかしこのアルミ缶集めもこの4月からの法律改正で犯罪行為になってしまうそうだ。Aさんどうするのか。
番組の最後でAさんは彼女に自分が描いた似顔絵をプレゼントする。今後はお互いに支え合って乗り切っていかなくては、と語った。
今回の3本。いずれの出来もレベルが高い。また筆者が最初の頃ヒコロヒーをずっとワイプを切って晒すのは止めたほうが良いと指摘していたが、近作では入れたり消したりし工夫もしている。ヒコロヒーも戸惑いを隠せなかった最初の頃に比べ、内容を受け止めて短く的確なコメントを言えるようになっているのでは、と感じた。番組として熟成度が上がったといえる。
このシリーズは既に20本を超えた。毎回観ていると世の中の端っこで精一杯生きようとする人の真摯なドラマに出会う。最初のうちは物珍しさ、怖いもの見たさ、だったのだが、最近は登場人物たちの人生について思いを馳せ、自分に照らし合わせることが多くなったと感じる。一方彼らに「幸せに生きて」と願うのは遠くで見ている第三者の「不遜」なのではないか、との自責もある。そうした味わいは長時間の取材をしているからこそ、そこから滲み出てくるものだと思う。これからもどんどん視聴者を攻める番組を制作しづづけて欲しい。(KING)