「声が聞きたい~ゆれる個人情報の境界線」(中京テレビ・ドキュメンタリー)

  • 番組名:「声が聞きたい~ゆれる個人情報の境界線」
  • 放送局: 中京テレビ
  • 放送日時:2018年11月25日 25時05分~35分

「御嶽山の噴火でいまだに行方不明の男性家族が、その男性が消防に残した救助依頼音声を聞かせてほしい、と望んだ所、消防署から「個人情報保護」の立場から「本人の了解がないと」公開できない、となんとも不思議な回答が来る。
肉親が亡くなった家族の声を聞くことがなぜ「個人情報保護法」に抵触するのか。そんな素朴な疑問が番組のバックボーンである。

中央の役所の答えは「それぞれの地方の特性があるから自治体にまかせてある」という。専門家は「全国一律でないと意味がない」という。
そこで番組は全国の消防署にアンケートを取る。その結果現在日本には3,000通りの「個人情報保護」に対する解釈があり、個別にはすでに開示しているところもあるという。不明の男性の友人たちが署名を集めて当該消防署(自治体)を動かす。条令は改定され、家族はついにその最後の声を聞くことが出来たのだ。

調査報道、といっても良いこの番組は、実際に(間接的ではあるが)行政を動かした。そして更に「個人情報保護法」とは一体誰の何を守るべきか、を訴える。この法律だけではない法令の「本末転倒」ぶりをあぶり出した。
30分番組とは言え、取材に掛けた時間は長く、訴えにはチカラがあった。行政が意外と簡単に改定に応じた様は先述のように現在の「個人情報保護法」が誰のため、何のためにあるのか、の根本的問題を示唆しているように受け取れた。欲を言えばそれがナレーションなり、当事者の語りから訴えられるともっと強い主張になったのではないか。短編ながら見応えがあった。」(KING)