- 番組名:私のドキュメンタリー 10の旅 長良川ど根性
- 放送局:東海テレビ
- 放送日時:2019年2月
東海テレビ60周年記念番組「私のドキュメンタリー 10の旅 長良川ど根性」
かってのドキュメンタリー番組であり映画館上映としても好評を得ていると聞く10の番組を60周年というタイミングで振り返りや現況のレポートも入れて放送、しかも土曜日午後帯という良枠での放送という事でいかに東海テレビが力を入れているのか、よくわかる。
年初から放送しているようで、「人生フルーツ」や「憲法とヤクザ」はこのシリーズでは見逃した。
ようやく「長良川ど根性」を見たが、2時間半という長編でいささか眠くはなった。三宅民夫氏が全体の案内役を務め、早朝のハマグリ漁に参加するところから始まり長尺のドキュメンタリー番組があり、その後ドキュメンタリーに出演していたお二人が三宅さんとハマグリ料理を前に現況を語る。河口堰開門の動きに対して「もう元には戻りたくない、前を向いて動いていきたい」と語る彼らの考えはよく理解できる。政治や行政の都合で、折角困難な状況を好転させてきた漁業組合の取り組みを再度混乱させられたら堪らないと伝わった。こうして以前の番組を再度検証して追加取材をしていく事はとても有意義だと感じさせた。その瞬間の主張は時間が経ち客観的にはどうだったのか、国はまだ開門調査の意義を認めていないようで前例を否定されると困るという思惑が働いているようだ。知見を進化させる態度とは思えない。ただ、漁民にとっては落ち着いてきた漁場環境をまた荒らされては適わない。漁民の主張はよくわかる。難しいところだが役所の前例踏襲主義や事実隠蔽体質だけは許せない。時間が経って取材した中でさらに問題点が見えてきた。そうした意味でのこの番組の放送は評価するし、この良枠は60周年ならではの事だと思い東海テレビの判断に敬服する。
残念だと思ったのは一点ある。三宅民夫さんの起用。素晴らしいアナウンサーで前向きな取材姿勢や実直な人柄は画面から滲み出ていた。地元出身でもあり地元事情にも通じているので起用の理由はわかる。しかし、NHKの代表するアナウンサーだったこともあり、NHKの番組と思ってしまう。アナウンサーを使うなら何故自局のアナウンサーをたてないのだろう?60周年ということであれば東海テレビの総力を挙げて放送を盛り上げていく方がいいのでは?自局に相応しい人がいないのではと疑われる。それは少し寂しい話。三宅さんがタレントと思えれば理解は変わるけど、あまりに偉大なNHKのアナウンサーだったから。周年記念番組は何のために作るのだろうと考えてしまう。視聴者に感謝、放送局の次の時代へのジャンピングボード、営業手段、そして社内意識の向上という側面もあるはずで、その点でも東海テレビのアナウンサーを起用する事で社内の空気は変わってゆくのではないだろうか?
柴垣邦夫