2019年7月の懇親会

6月は単発番組が少なかったことや、もう一つ皆さん筆が進まなかったようで投稿数が少なくなってしまい反省ムードが漂う中、今回の懇親会は始めた。ゲストに中日本制作所の増田達彦さんを迎える。増田さんが代表を務める中日本制作所はCBCで今年5月25日放送した「城下に3つの福が舞う 郡上八幡春まつり」を構成、演出。意欲的に番組作りに取り組んでいる。

まずは、増田さんの自己紹介があり、参加メンバーとダブるところも多くいろいろ思い出しながら話を聞く。新卒後CBC入社、10年後に退社し今の会社を設立されたそう。CBC在籍時には制作、社会情報系で活躍され「ぱろぱろエブリディ」や「土曜9時半!生放送」など多くの番組に携われた。マニアの中でとても評価の高かったし僕も好きだった音楽番組「ROCK-A-VISION」も企画、演出されたそう。FENのDJがアメリカの風を感じさせる恰好良い番組だった。その後、「名古屋発!そこが知りたい」(週一ゴールデン枠)のスタートにも立ち会い構成、演出を担当。硬めから軟らかめまで守備範囲広く忙しい毎日だったでしょう。「そこ知り」をやっていた時、原始的な職業であろう漁師に着目し番組を作ったが、その時から自然モノや生き物系にも魅せられその方面の番組作りの第一人者となった。

「郡上八幡春祭り」はKINGさんや中島さんが記事を書かれているのでもう一度ご覧いただきたいが、なかなかの秀作である。丁寧に行事としての祭りを描きながら、祭りに携わる人々を丹念に描いた1時間番組。参加メンバーからは高評価が語られる。美しい映像もさることながら祭りに関わる人がきちんと描かれている事。登場人物には祭りにまつわるエピソードが必ず紹介され、それを情感強く示す映像がシンプルに表現される。一体どうやってこれほど適切に映像が取れているのだろう?取材の稼働回数はどのくらいと聞くと、演出を担当した人は一泊2500円の宿を見つけ一人カメラを持ちほぼ一か月半にわたり密着取材をしたと言う。それだけに町の人ととても近い距離感が得られ、演出家のもつ目線の柔らかさもあいまった結果だろう。しかし、それだけ取材したら制作費はかなりかかるだろうと質問が飛ぶ。制作費としてグロスでいただいているという中で、利益を優先せず手間暇かけても企業努力で良質の番組を作ることを会社理念としていると言う。つまり良い番組を作ろうとディレクターの心意気、会社の心意気でやっているという事だろう。

郡上に住む役者の近藤正臣さんの番組内での使い方も抑制が効いている。祭りに親しみのある町の人として出ていただいたとのこと。僕なら語り部としてもっと前面に出ていただくことを考えてしまうかもしれない。主人公は祭りであり、祭りを楽しみにいろいろ関わりを持つ人であるという軸がしっかりしている。

話は変わるが、日本の祭りを長年こうして番組提供しているダイドードリンコさんも素晴らしいスポンサーシップだねとの話題。販促効果としては即効性がないだろうけど、この町では間違いなく好感度が高いし、長くシリーズ化していることで視聴者評価も高いだろう。冠番組のあり方として敬意を表したい。

そして構成、演出を担当された坂田ディレクターの健闘を称えたいというのが参加者の一致した意見。

放送局員を経験し、制作会社の経営者も経験する増田さんに、名古屋のテレビ業界に思うことを最後にお聞きした。放送局の制作幹部に対しての注文、「上から目線ではなく現場を知って語り合いたいと、それがあれば良い番組作りに僕らは頑張る」。こうした極めて意欲的で責任感の強い制作者に報えることは、適切な制作費をお渡しすることだと僕は感じている。放送局系の制作会社だけではなく、独立した制作会社が頑張れる状況を作ることは言葉だけになるがとても大切なことだと思う。

(増田さんからもらったチラシの紹介)

ケーナ奏者である岩川光さんと増田さんが映像作家水澄げんごろうとして映像を担当したイベント〔上映会+トーク+コンサート『古代の未来人』〕が9月21日(土)大須シネマにあります。増田さんもトークに出演されるようです。

柴垣邦夫