- 番組名:各局の選挙報道
- 放送局:在名民放、NHK
- 放送日時:先の参議院選挙期間
「投票率が報道の達成度のバロメーター」と締めくくられた柴垣氏の結論に賛同したい。今回の選挙後、Twitterで以下のような書き込みを見た。「低投票率を嘆くテレビ。おまえらに言われたくないわ」。報道に身を置いたものとしてこれ以上の衝撃はあろうか。
名古屋の民放は夕方大枠の情報・報道枠を確保していた。こうした枠を十二分に使って視聴者にこの参議院選挙の論点や有権者として考えるべきアジェンダをキチンと十分に提示出来ていただろうか。特定候補や政党に偏らないようにと放送法を忖度しすぎていなかっただろうか。所詮政権選択選挙ではない、という見方はなかっただろうか。開票速報、当落情報に力点を置きすぎてはいなかっただろうか。
私も各局の全番組を見ていたわけではないが、総じて言えることは、各局選挙について報道していないとは言わない。しかしワイド番組の中で選挙は埋没し、定時定量的なコーナーがあるわけでもなく、局として工夫し有権者の熱を上げ、投票行動に結びつくような工夫があったとは思えない。民放各局は低投票率を嘆く前に、それぞれの局の選挙報道を虚心坦懐に総括・反省し次に繋げてほしい。
特に愛知県は50%を切っている。これでは民主選挙とは言いづらい。投票に行かないという選択肢があるのも民主主義という風に嘯くのはやめていただきたい。そういう人に向けてこそ、普通選挙を獲得した経緯をテレビで詳らかにしてほしいものだ。中日新聞は投票日の朝刊に、普通選挙が出来るようになったばかりの昔、高知県の離れ島に住む漁師たちが時化た海を泳いで渡り投票をした例を引いて投票を呼びかけた。民放が投票を促すことは放送法で禁じられているのか?各局キャスターが自社スポットに出て投票を促してみるとかアイデアは話し合われなかっただろうか。
BPOの放送倫理検証委員会決定第25号「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」(HPに全文掲載有り)及び公選法151条の3を熟読願いたい。虚偽放送がダメなことはもちろんだが、量的公平性は求められていないということだ。とやかく言われる放送法4条に照らしても報道の自主編成権は保障されているのであって、質的に公平であれば問題はないはずだ。ましてや投票を呼びかけてはいけない、とはどこにも書いていない。
先のBPO決定の抄録には「真の争点に焦点を合わせて、各政党・立候補者の主張の違いとその評価を浮き彫りにする挑戦的な番組が目立たないことは残念と言わざるをえない」と書かれている。3年前にBPOにこんな指摘をされているのだ。各局はどう思うのだろう。
どこか「物言えば唇寒し」、「触らぬ神にたたりなし」、「無難で行こう」とする現場の萎縮、思考停止はないだろうか。現場は議論しているだろうか。開票特番を免罪符として、逃げていないだろうか。結果に対しては何を言っても大丈夫という空気が流れていないだろうか。8時ジャストの議席占いに全力を上げすぎてはいないだろうか。
今回の選挙を受けて「日本終わった」と投票をしても無力感に襲われている人、逆に行かなかった人は「やっぱり何も変わらないじゃん」と思考停止する。彼らが次の選挙に行くようになる工夫を是非現場で議論してほしい。
日本は終わりもしなければ、今回の選挙で何も変わらないわけはない(悪い方向へ変わる可能性も含めて)。思考停止、想像力の低下こそ恐ろしい。ローカルテレビだから、と思う前に自分たちが出来ることを議論してほしい。(KING)