番組名:ロストグルメ~絶滅料理を忠実再現
放送局:CBC
放送日時:2019・7・25(木)24:59~25:29
CBCの深夜開発枠、チャンネル5.5で放送。新聞では新番組表示。何週間かは制作されるのだろう、と思っていたら今週の予定はなさそうで、間隔を開けて第二弾があるのかもしれない。
特殊な料理の再現という点では中京テレビの「マンガ飯」と似た企画だが、現実に存在した料理の再現という点で全く異なる。
更に、中京テレビのようなタレントを使ったりドラマ的な演出は皆無で、徹底的にドキュメントとして作られている。
それは、架空の世界の表現としてのマンガ飯に対して、史実に基づく料理の再現という、企画の違いや、制作者が選んだの表現の違いなのだろう。
今回は徳川将軍のみ食べることを許されたという「白牛酪(はくぎゅうらく)」という高級スイーツの再現だ。
この不思議な食べ物の再現を託されたのは一流パティシエ辻口博啓さん。
番組は辻口さん本人が日本古代からの食の研究家、永山久夫さんを訪ね、文献にある情報を収集するところから始まる。
材料は極めて特殊な牛「白牛」から採られる濃厚な牛乳と砂糖のみと判明。ただし、レシピは不明。絶滅した理由は料理が大変面倒だからだという。個人的には当時の食生活の紹介、例えば庶民のスイーツは何だったのかといった豆知識もあったらと感じた。
「白牛」は千葉に数頭、存在していた。牧場まで辻口さんが訪ねるが、残念ながら高齢で牛乳は採取できないと判明する。次に、目的の牛乳の成分を調査し、この成分に近い牛乳を探す。結局、辻口さんも知らなかったという、ガンジー種という牛から採られる高級&高価な牛乳をようやく手に入れる。
成分では遜色のない、この「ガンジー牛乳」に高価な砂糖を大量に加える。大量にした理由は当時の砂糖の高価なこと、味覚も現在よりも甘さが強調されていただろうというシェフの判断によるものだ。
そして、手を放さず煮詰めること6時間。辻口さんも、この手間暇の掛け方では存続は無理だろうと実感。
苦労の末、出来上がったスイーツを試食するのは辻口シェフとお弟子さんらしいシェフの皆さん。全員が納得のおいしさ、上品な甘さのようだったが、ここは誰か他にいないのかと思った。制作スタッフでもいいから第三者の感想が欲しかった。
もう一つ気になったのが辻口さんがこのスイーツを口に入れ、味わいつつ、感想を言う前に一回、カットが変わったことだ。ここは大事なところで、口に入れてからの最初の感想、第一声が重要なので、カットが変わるということは視聴者に違和感を与える。何か、味とは別のことを言ったのか、何だったのかは分からないが、これはカットしてはいけないところではないかと思う。
シェフの全面協力なしでは成立しないが、余分な演出を避けて、丁寧にプロセスを取材していくところが気持ち良い。最近では珍しい、ひとネタですっきりと見せてくれる30分番組。続編があるようだから、楽しみにしたい。
澤田健邦