- 番組名:「チャント!スペシャル・伊勢湾台風60年 色が呼びさます”記憶”」
- 放送局:CBCテレビ
- 放送日時:2019年9月26日(木曜)午後5時ごろから
今年は伊勢湾台風60年に当たり、各局チカラの入った企画を立てている。先に書かせていただいたメ~テレの特番しかり。
CBCテレビは午後の報道?番組「チャント!」の内容を一部スペシャル化した。伊勢湾台風が襲来した9月26日その日にズバリ放送を合わせたというタイムリーさは買いたいし、特番化してもいいような内容を敢えてレギュラー番組の中で放送することによって、より多くの人に防災意識を感じてもらいたい、という点も評価点だろう。
番宣や新聞広告でPRされていたのは、モノクロフィルムのカラー化のこと。色彩が付くことで、様々な事が分かってくる、という点に興味が湧いた。番組では午後5時ごろから7時の終わりまで、様々な防災企画が並び、その一つがCBCが保存するというフィルムのカラー化だった。
イントロは台風当時風雨の中をCBCの玄関前での生中継を担当した若きディレクターだった竹中敬一大先輩の証言。これは関係者じゃないとわからないかも知れないが(楽屋落ちかもしれないが)とても興味深く感慨深く吸い付けられた冒頭だった。
その後、伊勢湾台風概論、当時の被災者の証言(彼女の証言を独自のイラストで表現したのは良かった。画が状況を良く表現して上手かった)、増水の恐怖実験(体験)、JAXAとNASAの共同研究による雲の立体解析の挑戦、そしてこの取材中に出会ったという南区の山田さんが保存していた彼の祖父が台風被害を記録した約50枚のカラー写真を紹介した。
番組では経年で赤色化が進む山本さん所有のポジフィルムを専門業者に託してリフレッシュした。そうすると経年劣化したカラー写真が多弁になるのだった。これを当時の被災者に見せると、やはりその情報量の多さに60年前の出来事とは思えぬリアルさが伝わったようだ。番組の意図したところがひとつ実現したのだろう。これを最後の締めくくりでもゲストの福和名大教授が指摘したように、市民ひとりひとりが、今日の自分の問題として捉える、という所に収斂させたい。山本さんは祖父のポジフィルムを全部名古屋市博物館に寄贈した。紹介されリフレッシュされた50枚以上のものがありそうなので、今後の解明に期待したい。番組のフォローもお願いしたいところだ。
さて、カラー化されたフィルム(動画)はいつ放送?番組はここで天気予報と全国ニュースを30分はさみ、後半へと進む。ここでやっとカラー化されたフィルムの登場だ。(ひっぱるなあ)。見落としたのかも知れないが、このフィルムがどういう経緯で撮影され、いつどこを捉えたものなのか、何分くらいあるものなのかが説明されなかったような気がする。大切なデータだったのに、カラー化に目が行き過ぎていたか。実はこのカラー化フィルムは台風から1週間後にCBCテレビで放送された14分8秒の特番「あれから1週間~災害地の現状」からの抜粋なのだ。
筑波大学とコラボしたカラー化はAI技術を使い実現した。おそらく14分以上もあるフィルム全部をカラー化することは時間も金額も叶わなかったのだろう。それでも抜粋されたカラー化された被災の状況は、先のカラー写真以上の迫力とリアリティを持って私たちに迫ってくる。モノクロと比べてその情報量の多さは比較にならない。カラー化は単に見世物的なものではない。色が付いた伊勢湾台風の被災の様子は、時間的に近い感覚を持って私たちに強く訴えてくる。その事を先にも書いたように、私たち一人ひとりの防災意識の糧としなくては意味がないのだ。
そこで番組では大石キャスターが被害が大きかった南区星崎の小学校を訪ね、一緒にカラー写真とフィルムを観た。子どもたちの感想は予想通りのものだったが、彼らやテレビを通してこのフィルムを観た人々がそれぞれ感じたことを通して防災意識を高め、家庭で話し合うことの一助となればカラー化の役割は果たされたといえよう。そうした点で、このカラー化されたフィルムと写真の息の長い、広範囲の公開を希望したい。
現在この番組のHPでは(CBCテレビとしては珍しく丁寧な扱いだ)カラー化されたフィルムの原点である特番を始め、伊勢湾台風に関する3つの特番を見ることが出来る。カラー化されたフィルムは権利の関係があるのか公開はされていない。何とかならないものか。
全体としてレギュラー番組の中で長時間の防災企画を放送出来たのは良かった。(かつてはG帯まで突っ込んで放送していたが)一つ難点を上げれば、スタジオにいたコメンテーターやサブキャスターの顔がワイプで抜かれるのだが、不要だった。特にドキュメント色の強いシーンについては全く要らない。彼女ら(たまたま二人が女性だった)のコメントも当事者じゃないので、気持ち悪い距離感、所詮他のエリアの出来事的コメントとして捉えてしまううらみが残ったのだった。この辺りは研究の必要があるだろう。大石キャスターと福和先生の掛け合いは回数も重ねもう随分と慣れて、心地の良い説得力のある進行となっていた。(KING)