「絶滅料理再現バラエティ ロストグルメ」(CBCテレビ・バラエティ)

  • 番組名:「絶滅料理再現バラエティ ロストグルメ」
  • 放送局:CBCテレビ
  • 放送日時:2019年10月13日(日曜)午後3時30分~4時54分(全国フルネット)

全体の骨格としては中京テレビの「マンガ飯」に似ている。マンガが歴史に変わった構成。この7月に深夜で、本作の1つ(「白牛酪」)を放送していた。これを含めて3つの「ロストグルメ」を1時間半の全国ネット番組として紹介した。

「ロストグルメ」とは昔の偉人たちが食したもので今は食べる習慣が無くなった幻の料理のことだ。レシピが完全に残っていないものばかりで、担当する一流シェフはその再現に苦戦する。その模様が面白い。ドキュメンタリーだ。

スタジオMC(ロストグルメを供するレストランのオーナーという設定)が要潤。コメンテーターに専門的コメント担当の雑誌「Danchu」編集長、笑いにも振れるまともなコメント担当の勝俣州和、いじりボケ担当の小峠英二、大ボケ担当のみちょぱという布陣。この布陣はなかなか良かったと感じた。

昔の料理に苦心惨憺するシェフは、徳川家斉が食したというスイーツ「白牛酪」を再現するパティシエの辻口博啓、織田信長が徳川家康に振る舞ったといわれる「すきかかり」という一品に挑む和風創作料理の料理人・笠原将弘シェフ。そしてモンゴルまで出かけてチンギス・ハーンの愛したという「バルブ・スープ」という羊料理の再現を担当する日本橋たいめいけん三代目シェフの茂出木浩司シェフ。

この番組の見どころは、上記3人のシェフが「ロストグルメ」の再現にアイデアを出し苦悩し、レシピを想像し、試行錯誤を繰り返して挑戦する模様だ。このあたりも「マンガ飯」と同じだが、シェフが外に飛び出していく(海外まで出かける)ダイナミズムはさすがはカネがかかっているネット番組だ。この顛末の成功は、この3人のシェフにあれだけの苦労をさせたメニューの選定が上手かったということだろう。メニュー選定が、もしシェフを悩ませるものの必ず成功すると踏んでいたとしたら更に見事だ。一方再現不可だった場合の処理も考えていたのだろうか。裏話を聞いてみたい。

また各シェフのキャラクターが良かった(キャスティングの際も計算しただろう)。こうしてなかなかの見応えがある「クッキング・ドキュメンタリー」(笑いもあり)が出来上がった。一点、安いバラエティっぽかったのが、茂出木シェフのモンゴルの下り。市場~遊牧民族~国立博物館という段取りだが、これはもう茂出木のキャラクターを頂戴したバラティ色が強く出過ぎ。最初から博物館へ行けばよかったじゃん、という茶の間のツッコミ覚悟の演出だったのだろう。博物館から後日レシピが伝えられるわけだが、これは事前に分かっていたと思われ、スタジオでもコメンテーターらから突っ込まれていたが「モンゴルに何しに行ったの?」ということだろう。

まあ、よく見られるパターンではあるが、他の二人がそこそこ真面目に取り組んでいた一方、茂出木シェフの下りは全体の構成上、そうした色付けをしたのだろうか。仕込みっぽいが次作があるとするとこうした並びにするのだろうか。筆者は要らない要素だと感じた。笠原シェフだって笑いの要素はたくさんあったことだし、もうそれ以上の「バラエティ」感は要らないのではないか。スタジオにその役割をもっと担わせることだって出来るわけだから、真剣勝負のところはそれなりに作り込んだほうが迫力もあるし、面白いはずだ。

スタジオにいるコメンテーターはシェフの頑張りや苦労にツッコミを入れる役と、出来上がった「ロストグルメ」を試食し食レポをする役目が与えられていた。スタジオ進行上の適度のボケも。シェフのドキュメントが主でスタジオを従とした時間配分も良かったと感じた。

企画はCBCテレビの社員だが、「マンガ飯」の事をどのくらい意識していたのだろうか、訊いてみたいところだ。あとの座組は例によってPを外部との連合軍として、実際の制作は在京のプロダクション。最近のCBCのネット番組の共通した座組である。ディレクターに若手社員の一人くらい放り込めないものだろうか。本作、続編がありそうな感じだ。(KING)