- 番組名:カッティングエッジ 世界を変える科学者たち
- 放送局:中京テレビ
- 放送日時:2019年11月17日(日)15時~(85分)
中京テレビ50周年記念番組。5年前にも周年番組としてノーベル賞をとられた益川氏にも番組に出ていただき、今回も扱う重力波を神岡の研究施設KAGURAに取材に行き最先端技術をテーマとする番組を制作した第二弾でもある。同じ企画者が粘り強く提案、50周年番組として成立させた。そして名古屋大学とはさらに関係性を深めた内容で名古屋大学創立80周年記念と銘打ち、名古屋大学の研究棟での収録。古いイメージの大学構内がこんなにもモダンなのかと知っただけでも意味がある。
番組に関してはいくつか改善点はあるが、総論的には大学の先端技術研究がこんな形で行われ、社会、産業に貢献していく可能性を見せてもらったことは意義があった。MCの林修が日本の技術、産業の未来は悲観的に思っていたが、可能性のある未来もあるのだと言っていたが、僕も得心したところもある。ただ、イメージではアメリカや中国の展開に比べたらかなり差をつけられているのだろうが。そうだ、僕は何も知らない。日本の大学における先端技術研究の知識は新聞記事や雑誌記事で知る程度でまことに浅い。僕だけではなく一般的にそうであろう。そうした中でこの番組は個別研究を知ることができ、医療分野に一つの未来があると知り、飢餓の大きな原因を除去できる可能性に切磋琢磨していることを知った。そして、そうした研究を現実のものとしていくためには様々な分野の専門家がプロジェクトとして解決していくあり方、大学の研究棟のあり様もそうした中で大きく変わったことを知った。今回は名古屋大学が中心だが、そこでこうした取り組みがされている事を専門家以外にも伝えられたことは大きな価値が意義があった。大学の広報もこうした展開も一つの参考にするとよいと思う。
そして課題解決のために、従来のの縦割りから各分野が協力して実現に努力するシステム。現代の社会どこにも適用されないといけない課題だが、まだできていない組織はたくさんある。ラグビーの「ONE TEAM」が顕著な例だろう、気づいて実践する組織が間違いなくゴールに近くなるのだろう。
番組の改善点をいくつか記す。
個別の研究はわかりやすく説明できたものとできていないものがある。手のひらサイズのロケットは具体的な成果は何なのだろう。友達の結婚式に送った宇宙からの写真はきちんと説明、見せていないので腑に落ちない。重力波の研究がどういうことに成果として見えてくるのか僕にはわからなかった。そこで子供の教育論はあってもいいがまとめのような形で言われるのは納得できない。難解な研究内容が多いだろうから制作側も勉強が大変だろうが努力してほしい。
キャスティングについて、林修はさすがの理解力と進行力で適任。他に壇蜜、クイズ王の井沢、ナレーターに上白石萌音はキャラクターを十分使っての起用とは思えない。ガヤ芸人を使うよりはずっといいが起用した可能性を生かす演出が必要だろう。
しかし、ロボット研究の福田先生の表情が好奇心いっぱいで活き活きしていて、あんな教授だったら楽しいだろうなあと思った。こういう人材を紹介していくことは放送の役割だろう。名古屋大学がこれだけコラボした番組はないと思う。その意義はあったと感じる。ここまでコミュニケーションすることは一朝一夕ではできない。コーディネーターに敬意を表したい。
今日の新聞記事でCBCテレビが開放特許や大学の技術を使途や番組で紹介する取り組みをするとあった。大学経営や研究費獲得が厳しくなっている現在、社会的に意味のある研究を広報していくことは有効であろう。大学と放送局の距離が近くなることを願う。
柴垣邦夫