- 番組名:「おかえり~とこわかの町・伊勢」
- 放送局:東海テレビ
- 放送日時:2020年1月2日 木曜日 午後2時~午後3時30分(ローカル放送)
昨年も感想を書かせていただいた東海テレビが「エリアドラマ」と称するローカルドラマの第二弾。去年の舞台は大須だったが、今回は三重県の伊勢市だ。連続しているテーマとしては店を経営する「家族(親子)」、「街づくり」、「地域の人々」、「郷愁」それに「未来」といったところだろう。去年のタイトルが「ただいま」だったのに対するコールアンドレスポンスのような体裁。来年はきっと岐阜なんだろう。
さて、本作は伊勢市でゲストハウス(民宿)「とこわか」を営むの母子が(大塚寧々と本田望結)主役だ。父は世界を旅する画家。この民宿があるお伊勢さんのお膝元、川崎地区で母子と古くからのご近所さんと旅人が織りなす地域紹介型人生ドラマといった感じ。
ストーリーは昨年の大須編を基本的には踏襲した文脈で、概して「ありがち」ではあったが、地元の視聴者の共感を呼ぶには十分な出来で、作品として飽きずに観ることが出来た。ド頭に表示された「特別協賛:赤福」のロゴ、提供に付いた「近鉄」や松阪牛の「朝日屋」などの三重ベースの営業的アプローチも頑張った感が出ていた。
作品中気になったことを2つ先に挙げておく。まず私が寡聞にして知らないだけかも、なのだが、「河崎」という地区名の唐突感。どこのことなのか夏美の幼馴染の級友・幹太の12分くらいのセリフを待たないと分かりづらかったこと。その前に「三重県立伊勢河崎高校」という高校の看板の表示は出てくるが、それが河崎地区を指しているということが直ぐ分かるのは地元の人か、よほど伊勢市に詳しい人でないと無理ではないか。河崎というワードはドラマの中でも結構大事な単語なので、もっと丁寧な扱いが欲しかった。
「とこわか」という屋号が漢字で「常若」と書き、これが式年遷宮に由来することの説明が住民集会で夏美の母と旅人・恭平との会話で丁寧に説明されていた事や、恭平が街の人から「蘇民将来子孫」の話を聞くシーンとは対照的な扱いでは無かったか。
2つ目は夏美が髪の毛を金髪に染めてしまった事の唐突感。高校3年生の夏美はクラスの担任に東京の美大への推薦を勝手に決められたと憤慨するのだが、むしろ母親への反発の方が強いと感じた。その母親への反発が、どうも後付な感じがしてしまって、夏美の怒りが分散されてしまったのではないか。髪の毛を染めるまでの動機づけが薄い感じ。いきなり怒って金髪にされたら、そりゃ母も怒りたくなるんじゃないか。母に旅館で三重の海鮮を食べさせたいからああなったんじゃないか、と勘ぐりたくなる。
単発ドラマは些細なことがずっとあとを引いてしまう場合がある。個人的な視点かもしれないが、筆者には上記2つがどうも気がかりで仕方のない1時間半であった。配役としては本田望結の泣きの演技はさすがは子役から鍛えられた感があった。伊勢市近くの出身である小倉久寛はローカルドラマは意外にも初だという。いぶし銀の存在が作品の重石の役目を担っていたと感じた。
コミカルな味付けもありつつホノボノとするドラマ。名所や名物の紹介、過去のニュース映像を使う手法は前作を踏襲した。「エリアドラマ」の売りなんだろう。この流れは来年放送の「岐阜編」に繋がるのだろうが、ストーリーの基礎的部分は踏襲しつつ、味付けに変化を出すのは大変じゃないかな。楽しみに待ちたい。
ところで、制作の座組をみてみると、昨年は外部の監督を起用しているものの、製著は東海テレビであった。今回はテレパックとの共同制作著作となっていた。視聴者には関係のないことだが、ドラマの内容が「伝統の継承」という面もあったと思うのだが、ドラマ作りの継承も(作り手は外部になっても編成の継承は大切)極めて重要な面を持つと信じるので、編成P、制作P(ここは共同でも仕方がないか)、製著は自局で繋いでいって欲しいと思うのだ。(KING)