「スライス・ザ・ワールド渋谷スクランブル交差点からまっすぐ地球1周してきた!」(CBCテレビ:教養)

  • 番組名:「スライス・ザ・ワールド渋谷スクランブル交差点からまっすぐ地球1周してきた!」
  • 放送局:CBCテレビ
  • 放送日時:2020年1月25日(土曜)午後2時~3時24分(全国ネット)

CBCテレビが毎年1月最終土曜の午後に全国フルネットしている枠。ずっとネイチャーものが続いていたが(去年は濱田岳のアマゾン体験)今年は趣を少し変えた。リポーターにお笑い系タレントも加えて世界の「普通との遭遇」を情報バラエティ化。そこから見える「地球の現在と未来へのヒント」(番組HPより)を探ろうという狙いだ。

地球の緯度にこだわって世界を周るという企画は、周年企画としてよく企画に上がる。例えば40周年で北緯40度に暮らす人々との出会いをドキュメントする、などだ。今回の番組もそのような趣旨で世界で一番混む交差点として知られる渋谷スクランブル交差点と同じ北緯35度395の線をまっすぐ東に進み世界を一周(スライス)してこようというもの。この番組の売りは、敢えて絶景や特別なイベントを意識せず、同じ緯度で暮らす、ごく一般の人との出会いを取り上げたことだろう。恐らくリサーチやロケハンに多くの時間を掛け、実際何もないところからテレビ的なネタを探ったと思われる。その過程で「これは!」といった人物や光景に出会えたらそれでOK。本番はタレントを連れてきて感想を言わせればいいのだ。タレントには事前に知識を与えず、初見の感動を収録する、という段取りだったように思えた。

頭の回転が早く気の利いたコメントをお笑いも添えて言える千原ジュニアの人選は良かったと思う。彼が太平洋を渡って最初に出くわしたのはカリフォルニアのゾウアザラシが横たわる海岸。しかも雨の中。普通感が漂う光景だ。そこから真東に緯度にそって東部を目指す。ジュニアと同い年の農場経営者であったり、ラーメン店経営の夫婦だったり、俳優の北村匠海はアメリカ東部の養蜂家、大西洋を渡りモロッコ、さらにジュニアが中国の河南省へ。基本的にはテレビにはあまり取り上げられないだろうネタが並ぶのでとても新鮮だ。ストリートビューで地球を回った気になっている人には如何にリアルに人に出会うことが大事か、という気付きにもなったのではないか。

何気ない光景や人物にも必ず歴史があり、それは人を感動させる。そんな事を考えていた1時間半であった。ネット上の仮想世界に慣れてしまい、それが実際だと勘違いしている若者に観せたい番組だなとも。おじさん的には日本の若者にもっと世界に旅行し、リアルな世界を体験すべし、だな、という教訓臭い思いもあった。

この枠ではかつて「赤道」にこだわって旅をして世界の驚異と出会うという番組も作られ、赤道を縦軸としての番組構成はそれなりに見応えがあったものだ。今回は同様な企画ではあるが、普通の暮らしとの出会い、というのが良かったと感じた。来年はジュニアも言っていたが「縦に切る」という番組を作るのだろうか?それはまた面白そうだ。CBCはこの番組に関しては社員Dを必ず一人は取材にロケハンと取材に出かけさせ、制作力の保持に努力していたが今回はどうだっただろうか。数少ない海外ロケの大型番組、是非、若手を海外取材に送り込むことを継続して頂きたい。

全体として良く取材し、構成された面白い番組であったと思うが、番組のタグラインにあった「未来へのヒント」が薄かったな、と感じた。個人的にはナレーションのアニメ声があまり好みではなかった。(KING)