- 番組名:樹木希林の天国からコンニチワ
- 放送局:東海テレビ
- 放送日時:2019年12月24日(金)19時~21時
年末年始番組を大変遅くなったが見直している。
書かねばな、と思いつつなかなかできなかったことをまず詫びなければいけない。
東海テレビが平日19時台のゴールデン2時間枠の番組は独自の豊富な映像記録をふんだんに使い
見ごたえのある力作だった。
ここ数年で亡くなった方の中でとても印象に残った方の一人である樹木希林さん。
彼女の発言や振る舞いには一貫した人生観があり、その人生観を我が身に照らした時、
大きな示唆がある。
東海テレビは名張毒ブドウ酒殺人事件のドキュメンタリー番組でのナレーションの起用が
始まりで長年の番組での付き合いが続いた。
「地方の恵まれないローカル局」と親しみを込めて彼女が呼ぶ東海テレビと
良い意味での癒着関係にあったと言う。
伊勢神宮の遷宮特番を生放送した時も、その時の出演者として樹木希林さんが
キャスティングされとても羨ましく思った覚えがある。
その後も数々の番組でのお付き合いがあり、思い出深い取材がたくさん東海テレビにはある。
その樹木希林さんの番組VTRを娘の内田也哉子さんと番組プロデューサーが一緒に見ながら
希林さんの生きざまを呟くように語りながら、彼女の深いところにある謎を探っていく。
そして、母親が訪れた取材地を同じように娘が訪ねる。
必ず「母がご迷惑をおかけいたしました」と先方に言いながら。
内田也哉子の喋りが淡々としながらも敬愛あり説得力あり素晴らしい。
番組は伊勢神宮、父親内田裕也、自宅に飾られた絵画、戦争で若くて亡くなった画家達の作品を
集めた美術館「無言館」を中心に構成。
平日19時からのゴールデン枠が故に、前半は広く興味のある伊勢神宮や内田裕也との話題で
エピソードをふんだんに入れた展開。後半になり沖縄があり鹿屋の特攻隊の記念館を
訪れたシーンがあり、戦死した友人を詠んだ歌人の話を聞く。そして無言館のシーン。
このゴールデン枠で戦争を描いた事は見事だった。
出演者と制作者の理想的な関係。
娘の内田さんさえ心開いて番組に付き合っている。そして、樹木希林の想いをさらに表現した。
そこに打たれてジブリの鈴木敏夫さんもナレーションの仕事を為されたのだろう。
純な美しい大義に、心通じる人は集まる好例。繰り返し言うが出演者と制作者の理想的な関係だ。
番組プロデューサーの阿武野さんとディレクターの土方さんは昨年の話題作「さよならテレビ」
のコンビ。僕はこの番組には見た時から批判的で、テレビ局内の中で局員としてまずやる事が
あるだろうと思っている。
阿武野さんの番組を数多くは見ていなかったので批評はバランスに欠けていると思うが、
先入観を持って今回の番組を見た。だから見るのが遅くなった。
しかし、この番組は樹木希林の生きざま、想いを見事に表現した極めて価値ある番組だった
と思う。いかに先入観は余計なものか痛感した。
良いものもあればそうでもないものもある、そんなものだ。
柴垣邦夫