達成感あり。THK「どえらいもん映像社」

番組名 :「どえらいもん映像社」(再)
放送局 :東海テレビ
放送日時:2020年12月26日(土)10:55~

「ローカル局の目指す制作番組は、地元情報の掘り起こしに尽きる」と、よく言われる。しかし、さらにその先にある夢とロマンを追い求めてしまうのが制作者の性だ。この番組には企画者や現場スタッフの意地が垣間見られ、良い気持ちにさせられた。

第1話の「人類未踏の洞窟へ挑む」では、ぎりぎり体の通る穴や極度に冷えた水の中を演者もカメラマンもよく進めたものだと感服。疲労回復のためと洞窟内で鍋料理を食した余裕は信じがたい。タレントのティモンディ高岸は始終明るく振る舞い、金色の岩肌や青の地底湖を絶賛していたが、大声のせいで天井が崩落しなくて本当に良かったと思う。そして、案内役探検家の吉田氏が地底湖探索のために持参した潜水型ドローンは実に良い仕事をした。未踏の通路が見つかったのは、幸運の女神が彼らの勇気と努力に脱帽したからに違いない。
後日、経験豊かな吉田氏が、この通路を行き止まりまで進み、目標達成の旗を置いた映像には十分な力があった。岐阜県山県市(たまたまTVの旋風のメンバーたちと最近遠足に行った辺り)にこのような秘境があることも私は知らなかった。

第2話の「東海地方の自然からジュエリーを作る」では、積極的に汗をかいたデヴィ夫人(御年79歳)の満足が、素直に伝わった。場所の詳細こそ明かされなかったが、岐阜県内の川底からトパーズ(国内で採取できる最高の宝石)が見つかるらしい。石ハンター歴50年の宮道氏によれば、周辺の花崗岩の山が崩れ、条件が整ったとのこと。川砂利をふるいにかけるという地味な作業に夫人は根気よく取り組んだ。そして、とにかく自分で見つけたいという執念が、またも幸運の女神を振り向かせたのだ。さらに、これを指輪にしようという試みも楽しい。台座に使う鉄の原料は、愛知県春日井市の赤い泥(酸化鉄)。この採取にもデヴィ夫人は参加。7世紀からこの地に伝わる「たたら製鉄」の手法だ。これを岡崎市の金属造形作家戸谷氏がリングの形にしていく。石を磨くのは、一宮市の宝飾職人早川氏(現代の名工)の仕事。
後日、完成品を届けられた夫人は「この指輪を皆に自慢したい」と答えていた。どちらかと言えば武骨なできばえだったが、自ら手伝った作品だけに愛着を覚えたのだろう。嫌味のない表情であった。

以上、番組には地元情報が網羅されており、感情移入できる展開だったため、充実したものとなった。全体のナビゲーターは、佐藤二朗。彼は愉快な名古屋弁の企画選定プロデューサーという設定。欲を言えば、やや気になったのは以下。ティモンディ高岸とデヴィ夫人をディレクターと位置付けていたが、VTR中にそのような演出がなかったため、不完全な印象を与えた。単にリポーターかチャレンジャーという設定で良かったのかもしれない。

中島精隆