- 番組名:NHKを含む在名テレビ局のドキュメンタリーやバラエティ
- 放送局:NHK,CBC,東海、メ~テレ、CTV
- 放送日時:いろいろ
この夏の終わりから秋に掛けて、興味深く面白そうなテレビをジャンルに関係なく観る、といういつもの観方の中で触れた番組たち。その中から「これはよく出来ていたな」と感じたものをいくつか挙げ、それらの番組の視聴から頭に浮かんだ番組の「構成」「起承転結」の大切さについて考えてみた。
私が観た範囲で「佳作」と思えたのは以下の番組。・CBC「伝える’26 受忍”耐え忍ぶ国”の終わらぬ戦争」=TBS制作、(9/21) ・東海「東海のイイとこみんな教えて!田村淳のスマホ旅 特別編@能登」(9/27) ・NHKG「豊臣兄弟!38話 和を以て、大和をなす」(10/4) ・NHKBS「ワイルドライフSP 知床半島に生きるヒグマ変わりゆく”生命の楽園”」(10/5) ・NHKEテレ「世界のドキュメンタリー『マッカートニーの消えたベースを捜せ 前・後編』」(10/9,16) ・NHK「NHKスペシャル ”靖国神社 スクープ資料 空白の戦後史 秘録に何が”」(10/11) ・メ~テレ「テレメンタリー2026”動かぬ進路~船の体育館解体~”」(10/13=瀬戸内海放送制作・全国ネット) ・NHKG「映像の世紀 バタフライエフェクト ”脱出者たち 自由への逃走と闘争”(10/5) 同 ”こうして世界大戦は始まった”(10/19) ・中京テレビ「線をひくだけクイズ!センビキ」(10/7) 以上だった。(順不同・10月20日現在)
ジャンルもバラバラな番組群だが、これら一連の番組の何が面白かったのか。筆者はすぐに「構成」「起承転結」の設定が良く出来ている、ということに思いが至ったのだった。一番それを感じたのがNHKGの大河「豊臣兄弟!」38話だった。この番組、現代風な演出、またオーバーアクト気味の演技付けがあまり気に入らず、この地区が絡んでいなければ観ていなかったと思う番組。言い方は悪いが付き合って観ていた。しかしこの回に限っては違った。秀長が大和郡山を治める事をテーマに一話完結のスタイルを作り、話の幹に筆職人・才蔵(間宮祥太朗)を据えて、ドラマ作りで感動を作り出す起承転結の見本のような構成に仕立てた。筆者は今年の大河の「神回」ではないか、とさえ感じたのだった。
一方、北海道・知床半島に生息するヒグマたちの生態を1年がかりで追跡したNHKBSの「ワイルドライフSP」はドローン映像も見事な労作だった。ヒグマたちの生態は海から川を遡ってくるサケ・マスの存在と分かちがたく、近年の温暖化でサケ・マスの遡上が激減したことがヒグマだけではなく野生動物たち、さらに植物の生態系にも大きな影響を与えることを丁寧に追った。この番組ではキーになる温暖化によるサケ・マスの激減化を通して、視聴者に何を考えて貰いたいかが自ずと浮かび上がる仕掛け(ディレクターがそうしたのかどうかは分からない。結果、かもしれない)となっている。淡々と綴られる「序破急」ともいうべき構成のインパクトが強烈だった。
同じNHK制作(局制)で、これは今の民放には出来ないだろうなあ、と感じさせたのがNスペの、いわゆるA級戦犯合祀にまつわる特ダネだった。これまで表に出てこなかった事実を積み重ねる「構成」で主題を明らかにしていく。本作は最近見たドキュメンタリーの中でも出色だと感じた。戦争責任という繋がりでいえば、TBSの制作(局制と思われる)で日本人を縛る「受忍」という概念の紐解きに挑戦したTBS松原耕二キャスター取材による番組も、その「構成力」に見応えがあった。
NHKといえばバタフライエフェクトを挙げずにはいられない。毎回実によく構成されているし、現代の政治情勢を鏡のように活写する現代日本では稀なる番組といえる。日本の、また世界の政治情勢に極めて(さりげなく)批判的に構成されていると筆者は感じる。NHKの良心のような番組だ。主にPlan Dというプロダクションが手掛けているようだが、主題に関する資料を大量に読み込んで分析して構成しナレーション原稿を書き、それにまつわるアーカイブ映像を探し出し、主張を組み立て行く過程は圧倒的である。脱走者の回では、チャーチルと、ベトナム難民からハリウッドスターになったキー・ホイ・クァンを上手く使っていた。先の大戦はどうやって起きたのかを追った先回では、この番組のやり方だが過去のキーパーソンの言葉を用いて、現在の分断社会、力の支配(専制政治)、自国主義(ブロック経済)、過去から学ばない人間の愚かさに警告を発しており、毎回ながら見応え十分だった。第二次世界大戦(太平洋戦争)直前に世界の指導者が口にしていた言葉は、まさに現在東西の強国の指導者たちによって繰り返されている。番組の終盤、敗戦直後に東洋経済新報記者だった石橋湛山の語った至言はよくぞ見つけてきた、と感心した。まさに今のことを指摘している。この番組はナチスやスターリンをよく取り上げるが、彼らのしてきたことを現代地球人は必死に考えなくてはならないと訴えていると筆者には感じるのだ。
バラエティにも、演出者が計算づくで意図したのか、彼の体内にそうした演出力が染み付いているのか分からないが、観終わって、面白かったな、と感じる番組は、「結」、バラエティでいえば「オチ」の部分を含め途中の山の作り方など「起承転結」の巧さが透けて見える構図になっているものが多い。田村淳のスマホ旅は放送エリア外で収録というので久しぶりに観てみた。やはり知らない土地で、しかも地震や水害の被害を受けた地域での事情も加味されて面白い出来になっていたと思う。この番組放送は東海ローカル放送でもいいから放送エリア外にどんどん出てみればいいのに、と感じたのだ。もっといえば全国ネット番組になってこそ面白いのかもしれない。CTV「オモウマい店」のように。バラエティジャンルではCTV「センビキ」もネット番組としては二回目の放送になるのか、コーナー企画がブラッシュアップされていて更によく考えられた面白いものになっていた。筆者も頭の体操になり楽しんだ。しかし、2時間は長いと思う。せっかく良いコーナー企画が複数あるのだから、1時間番組のほうがインパクトがあると感じたのだが、どうだろう。
メ~テレのテレ朝発全国ネットドキュメンタリー枠「テレメンタリー」で放送された瀬戸内海放送制作のドキュメントも考えさせる作りであった。歴史的価値がある丹下健三設計で船のように見える旧香川県立体育館の解体を巡り行政の姿勢をあらわにしつつも市民の限界も痛感させた良作。最後になったが、ポール・マッカートニーがハンブルグで購入しビートルズの初期に使っていたベース。これが盗まれて行方不明になっているという謎を解いていくETVの世界のドキュメンタリー、イギリスのプロダクション制作による前後編も調査報道しても上手い構成で魅せた一作だった。
このように良く出来た番組(映画でもそうだが)は、「持ち時間内の構成が人の興味の引っ張り方を心得た上手い構成になっている」、ということを改めて知らされた番組たちであった。視聴者はそんな事を分析しつつ観ているわけではないと思う。つまり作り手は面白さを計算して提示できるのだから、その辺りをしっかりと考えれば、味わいもまた変わる、ということなのだ。そんな事は言われずとも、と言わず胸に手を当てて考えて欲しい。(KING)