「メーテレドキュメント 葬られた危機〜イラク日報問題の原点〜」

  • 番組名:メーテレドキュメント 葬られた危機〜イラク日報問題の原点〜
  • 放送局:メーテレ
  • 放送日時:2019年1月20日(日)13時55分~

平成30年日本民間放送連盟賞テレビ準グランプリ受賞番組の再放送とある。テレビ報道部門の最優秀賞ともあり、昨年5月に初放送のもの。昨年大きな話題となったイラク日報問題で戦闘地域であるかなしかの議論があったが、それよりもかなり前の湾岸戦争時に政府が派遣した民間船「きいすぶれんだあ」がミサイル攻撃にさらされていた事実が外務省に隠ぺいされていたことを追っかけ取材したドキュメンタリー番組。

20172月に当時の船長の証言を得てから丹念に当時の担当者にインタビューし事実を明らかにしていった。民間船がミサイル攻撃にさらされていたというあってはならない事実と、「虚偽」と「隠ぺい」という現代でも横行している官僚の処世術をあぶり出している。ある官僚は部下に任せていたと言い、ある官僚は発表していたら対応に時間がかかり業務が滞ると言い自身の行為を正当化する。今も続く国民の知る権利を愚弄する行政の悪癖。そうした意味では昨年5月の放送も今回の放送も「虚偽」と「隠ぺい」が話題の時にタイムリーな番組であった。また、最優秀賞に値する番組であった。

    僕が編成にいた時に、このような日本全体としてのテーマを真正面から問題にしたドキュメンタリーの企画は出てきた事がない。地域から演繹して現代的なテーマにしていく番組はもちろんあるのだが。会社によって違うのかもしれないがこういうアプローチや志の高さは清々しいし、感心する。ホームページによるとプロデューサーは“憲法の転換点”を探るべく今後も取材を続けていきたいとある。引き続きの健闘を期待したい。しかし、官僚による「虚偽」と「隠ぺい」はいつになったら無くなるものか?

柴垣邦夫