名古屋行最終電車2019 メ~テレ

2012年からほぼ毎年30分ドラマをシリーズで創りつづけているメ~テレのローカルドラマ「名古屋行き最終列車」。名鉄電車の中で起こるちょっとした事件をきっかけにストーリーは始まる。30分の一話完結のショートエッセイのようなドラマだから、あまり大げさな起承転結や深い心理描写などを期待しないでバラエティーのような感覚で番組視聴に臨んだ。松井玲奈は、この番組の看板ともいえる存在であるが、(第一話)松井扮する吉川一美は、今はフリーの雑誌ライターとして連載を持つが、ナナちゃん人形を取材。そこで鈴木福、皆川猿時らと出会い彼らの恋の成就を見届けることになるが、なかなか自分の期待通りにはいかない。このドラマ彼女にタイムスリップさせ、恋の成就の結果を変えさせる魔術をかける。映画スライディングドアのように結果は面白いように変わる。皆川の役がカメラマンとして大成功なのもうける。松井玲奈がセーラー服になっていくのも見どころの一つだが、最終的には自分には結末が何一つ変わらない一美であった。このドラマは、機知にとんだスピーディーな物語の展開をさせ飽きさせなかった。
第二話は、矢本悠馬扮する孤独な新人会社員の初恋の物語。ここでもローカルドラマの特徴を生かし実在のカッパエビセンの会社を舞台に繰り広げられる恋の成就の成り行き。
主人公を取り巻く会社のおばさんたちの会話や、卓球部の先輩のドジなおせっかいなどがコミカルにしつらえてある。彼のなんともさえない普通ぶりが、成就は期待せずとも微笑ましく楽しめた。よくある失恋話が、そこはかとなくペーソスを醸し出す。
第四話は、夢の女優を目指し小劇団員となった花澤香菜が、アルバイトで電話応対の仕事をする回。旅行案内から、SMから引きこもりまで10種類の電話応対を感じしなければならないので大変であるが、演技の勉強だからなんとこなしてしまう。バイト先の上司東根作寿英もびっくりの才能で、次から次に課題を増えていく。てんやわんやに応対する花澤の演技には、思わず感心もしたりした。引きこもりの相談者にSMの口調で応えたことから事態は急転する。最後はめでたく一件落着し、準主役の役柄に出演するまでになるのだが。この回もスピーディーなコミカルタッチの展開が楽しめた。
要するにこのシリーズは、どこにでもあるような身辺雑事の出来事をコミカルに描き、そして主人公の周りには、どこにでもいそうな同僚や家族、近所おばさんおじさんのさもありなんという会話を配置しながら、ちょっとした物語を綴っていく。笑って、ちょっぴり泣いて、そして最後は何となく心がハッピーになっていく。ミニドラマであるがちょっとしたカタルシスに誘ってくれる。
スタッフにもドラマを作るという変な気負いも感じられない。ローカルドラマとして自社スタッフで作り続けることは大変なはずだが、毎年作り続けてきた労苦は褒められてしかるべきだと思う。出演者陣も、六角精児などレギュラー陣など固まってきて、等身大の役柄を演じている。大杉連(昨年没)さんのラーメン物語は、遺志を継いで続けるという。名古屋人女優松下由樹さんもおばあちゃん役で三作目。なんといっても松井玲奈扮する吉川一美のその後に、シンパシーを感じながら期待したい。がんばれ!名古屋発等身大群像コメディー。
(クレソンおじさん)