「歴ドラ・武将がスーツに着替えたら・・・」(中京テレビ:ドラマ・バラエティ)

  • 番組:「歴ドラ・武将がスーツに着替えたら・・・~関ヶ原の戦いは、サラリーマンの派閥争いだった!?~」
  • 放送局:中京テレビ
  • 放送日時:2月16日(土曜)24時55分~25時55分

制作部に配属されて3年目、20歳台の若手ディレクターの企画を編成が通し、おそらくローカルの仕事としては今年最初のドラマとなるであろう「TBSスパークル」(今年1月1日にTBS系制作会社11社が再編されて出来た巨大制作プロダクション&タレントマネジメント会社。TBSヴィジョンやドリマックス、エフエフ東放などが入っている)と組んで制作したバラエティ型歴史ドラマだ。「TBSスパークル」は、TBS系以外の系列の仕事をする時はTBSの屋号を外す。ロゴは「閃(SPARKLE)」と表記される. エンドロールの冒頭に自分の名前があるのは、企画者にとって誇らしくもあり自信になったのではないか。監督は旧ドリマックスのベテラン演出家棚澤孝義氏が担当している。プロデューサーの一人にかつての地元の戦友で、今やすっかり東京で腕を上げた男の名前を見つけて、「故郷に錦を飾ったわけか」と一人にんまりしていた。

閑話休題。戦国時代を現代劇に翻案したり、タイムスリップさせたりするアイデアは特に新しいとは思わない。2017年にはCBCテレビが田辺誠一、竹中直人を使って「父、ノブナガ」というなかなか歯応えのあるドラマを制作している。

本作を観ての第一印象は、「誰に向かって作った番組なんだろう」ということだった。歴史好き、就中、「戦国時代」に大いなる興味を持ち、「日本100名城」制覇を目指して旅している筆者としては、手ぐすね引いて鑑賞した。確かに、ドラマはその殆どを中京テレビ本社屋内で撮り、低予算化を実現していること、ドラマの間にSKE須田亜香里、歴史好きなブロードキャスト!!房野史典、抑えに予備校教師伊藤賀一の3人によるスタジオ開設を挿入した点は分かりやすく、ドラマの演出も流石に手練の手になる破綻のないものだった。あらかたの関ヶ原の戦いの経緯を知っているものとしては展開よりも、現代にどう翻案したか、に興味が向いたのだが、破綻はないものの、脚本を含めて「新鮮さ」「斬新さ」には残念ながら遠いと言わざるを得ない。ということは先が史実に基づいて読める分「面白み」に欠けたということだ。

そして冒頭の筆者の疑問に戻るわけだが、「誰に向かって作ったか」について考えてみる。週末の深夜、ということを考慮すると一義的に若者に対し歴史を楽しく見せる、ということ、いうなればお勉強バラエティ。二義的にこの時間もまだまだ起きている人が多い中高年に向けた(まさに現代の豊臣物産の設定はサラリーマンなので)社内抗争モノと歴史物を引っ掛けたエンタメに仕上げたかったのか。あるいは「歴女」に対して? 歴史好きな筆者としては当たり前過ぎて「ふーん」という印象で過ぎていった一時間だった。視聴率やその年令性別性向は未明だが、例えば、列記してきたような対象全てに楽しんでもらおうとしたのか。もしそうだとすれば、SKE須田の起用も含め焦点はボケた感は拭えない。

手練手管の東京のプロダクションを巻き込んだ番組全体としてのチャレンジ精神とこれを1時間番組にして深夜のPT番組に仕上げた編成サイドの攻めは(制作体験3年目の若手社員の企画を通すという面も含め)買っておきたい。中京テレビの女性アナウンサー諸氏や神アナの活躍もローカルタレントの多用も親しみやすさの演出と経費削減とプラスに捉えておくことにしよう。この枠ではいろいろと冒険的な番組に挑戦してくれているので、是非、若手はアイデアをどんどん出して、企画書を編成にぶつけていって欲しい。楽しみにしている。(KING)