「ロストグルメ2」(CBCテレビ:バラエティ)

  • 番組名:「絶滅料理よ いざ復活! ロストグルメ2」
  • 放送局:CBCテレビ (全国フルネット特番)
  • 放送日時:2020年10月4日(日曜)午後2時~午後3時24分

昨年に引き続きこの時期に同意趣の特番が全国ネットで放送された。パート2が作られるということは初作がそこそこいい数字を取ったという事だろう。特に東京で。このサイトにも昨年の批評へのアクセスが多いということは、今年の番組はどう観られたか、を気にした人が多かったということだろうと推察する。そうなると批評子としても、黙っているわけにはいかない。

さて昨年はシェフ3人による再現だったが、今年は2つに絞り、海外ロケは時節柄止め、その代わりに「主婦の友」に掲載された昭和初期の珍料理を紹介、果たして結果はこちらの方が断然面白かった。面白まじめをやらせると上手いCBCの伝統が生きていたな、という感じだ。昨年、苦労の割には滑ってしまった感がある「日本橋たいめいけん」茂手木シェフの下りに相当するパートが無くなり、大ネタを2つに絞ったことでそれぞれの再現が強調できたのではないか。

大ネタも流行を捉えた明智光秀モノと、マイケル・ジャクソンの日本人専属シェフの話題を揃え、それぞれ丁寧に分かりやすく作り込んでいた。光秀の「汁講」の味噌汁はデータが無く、笠原シェフの研究と想像の産物であるが、仕上がったもの地域特性や歴史の状況も踏まえた納得の逸品。シェフも自分の店のメニューにしようかな、というほど良い出来となった。おまけの笠原シェフの可児市での「汁講」と「汁粉」の混乱の下りは素直に笑えた。マイケル・ジャクソン日本ツアーの時の専属シェフが作った豆腐ハンバーグはマイケルの背景も筆者には新しい情報で、なるほど、と思いながら観ていた。これら2つの大ネタは見せるプロセスの演出が納得性が高く上手かった。

更に今回新しい試みとしてトライした昭和の珍メニューは、古さを強調した映像とナレーション、歴史的仮名遣いを使用した字幕とそのフォント、BGMなどの演出が上手く、楽しく見せていただいた。なんと言っても圧倒的なリサーチ力(りょく)がものを言った感じだ。珍しさ、意外性、新しい気付きなど知的好奇心を満足させる構成となっていたのだ。

パート2となる本作は前作より相当面白かったと筆者は感じた。スタジオの面々は去年と少し変わったが、ナイスなツッコミの小峠、飛び道具的コメントのゆきぽよ、VTR出演の井戸田潤、そしてMCの要潤らの存在もいい感じだった。総じてこの手の番組の評価軸は、自分が知らなかったことを知ることが出来た新鮮な驚きに尽きるだろう。その評価軸から見ると、筆者としては満点に近い評価をしたいと思う。それに笑いを添えて良質なバラエティとして仕上げたのだ。再現グルメに対しDANCYU編集長のコメントがもう少しあると更に良かったか。主たるスタッフは在京のプロダクションだが、プロデューサーたちを社員で固めて、構成作家と番組の方向性や質を徹底して話し合ったのではないかと、(コロナ禍のロケ、収録という点も含め)その苦労が推察出来た。

コロナがなければ「主婦の友」ネタは浮上しなかったかも知れず、海外ロケを含め大ネタ3発という構成だったかも知れない。コロナを奇貨として、良作が生まれた、と捉えたい。回りくどい言い方だったかもしれないが、筆者としては大変面白い番組だった、と総括している、ということだ。さて来年はどうするのだろう。(KING)