親子の絆、深まるね。CTV「こどもディレクター」

放送日時:2023年6月11日15:55~
放送局:CTV
番組名:「こどもディレクター~こどもだけで親を取材する番組~」

心に染みる素敵な番組だった。小学生を中心とした子供ならではの疑問を親に尋ねてみる番組かと思いきや、さにあらず。親の気持ちが分かりかけた年頃の若者(こどもⅮ)が、親の人生の転機や自分(こども)との関わりの中で起きた出来事について、その時の親のホンネを聞き出す企画だ。

番組で紹介されたのは6組の親子。局に任命されたこどもⅮらは、それぞれの親にインタビューを展開し、確かな手応えを得た。

●こどもⅮ健治さん(29)「無口な親父のプロポーズの言葉は?」
屈託のない健治さんと違い、父は高倉健のように強面でシャイ。そんな人が一体どうやって母にプロポーズしたのか。父母へのインタビューでは父は沈黙を通したが、母の遠慮がちな証言により以下の台詞が浮上。「結婚式場、見に行こか…。」健治さんはこれに敬服。めでたし。

●こどもⅮ健太郎さん(27)「お母さんはあのとき再婚するつもりだったの?」
中学のとき父を癌で亡くした健太郎さんは片親で育った。ある日、母に「お父さん以外の人が父親になったらどう思う?」と聞かれたことがある。しかし「嫌だ」と答えてしまった為、その後の母の苦労を倍増させたのではないかと気に病んでいた。母は再婚したかったのだろうか。時間をかけて問い質してみると「それはない」との回答。勇気の要るインタビューだったが、やっとモヤモヤが吹っ切れた様子。さらに父が自分のことを「自慢の息子」と語っていたことも分かった。「今回の取材を通して、自分も父が好きだったことに気づけた。改めて家族の絆が深まった気がする」という健太郎さんの顔が爽やかだ。

●こどもⅮ理恵さん(22)「ママはなんで中国から日本にきたの?」
中国人の両親を持つ理恵さんは、父を追って来日した母の気持ちを知りたかった。結婚に至る経緯を両親に教えられ、縁や絆について学んでいく。取材中に中国に住む祖父母と電話するシーンがあったが、それがとても良かった。祖母「娘と離れたときは寂しかった。でも結婚したくて旦那さんのところに行っちゃうのはどうしようもない。仕方がないんだよ」(これを受け)理恵さん「家を出てもいっぱい帰ってこよっと」 う~む、幸せ過ぎる愛の連鎖に何だか泣けるね。

●こどもⅮひかるさん(22)「パパはなんでお茶屋さんを継いだの?」
上京して就職しようとしているひかるさんは、自分が実家のお茶屋を継がないことにうしろめたさを感じている。姉も同様に家業を継がず、既に就職済み。口数の少ない父へのインタビューは難航するが、姉への取材により娘たちに対する愛情が痛いほど分かった。姉に対し、父は「無理に継がなくていい。皆が幸せになってくれれば…」と語ったという。そして、ようやく父へのインタビューに成功。父「自分はお茶屋だけをやるつもりはなかった。お茶文化を広め、世界を股にかける経営者になるのが夢だった。そう思っている内にこの歳になっちゃったよ。あはは…」ひかるさんは改めて父に敬意を抱き、いつか恩返しをしたいとコメントする。こういう話ができて本当に良かったなぁ。

上記の他に紹介された2つの事例も親子愛を軸とするしっかりした仕上がりになっており、心を動かされた。スタジオコメンテーターは斎藤工、YOU、やす子の3人だったが、皆、誠実な反応で好印象。また、エンドロールバックには、さらにいくつかの事例が短く紹介されており、多めの取材を試みた努力がうかがえた。

中島精隆