「コツコツ人生館」(東海テレビ:バラエティ・情報・教養)

  • 番組名:「コツコツ人生館」(東海テレビ開局60周年記念特番)
  • 放送局:東海テレビ
  • 放送日時:2019年2月3日(日曜)午後4時05分~午後5時20分

東海テレビは開局60周年の特番をたくさん作るんだなあ。現場も大変だっただろうけど、やり甲斐もあったに違いない。恐らく3月の年度いっぱいだと思うけど、最終盤にさしかかったこの時期に、チカラの入った特番が登場した。

趣味の世界が「病膏肓に入った」状態の人々の生態を取材した番組は、ドキュメンタリーのみならず、バラエティやワイドショーなどで取り扱われること数多(あまた)である。本番組もその範疇に入るのだが、スタジオとVTRを組み合わせ、チェンジオブペースに小ネタを出してみるなどはありがちな構成パターンであったものの、大きなVTRネタの纏めに使った「ぱらぱらマンガ」の存在がなんとも魅力的だった。この番組はこのアイデアと取材対象の人選で成功したと言い切っていい。お笑い芸人で絵のうまい人に書かせたかなりの長さの「ぱらぱらマンガ」は、ベタではあるが感情を盛り上げるBGMとも相まって、登場した人々の「夫婦愛や親子愛」などを情緒たっぷりに表現出来ていた。その素朴さが心に沁み、VTRの内容を上積みする効果を産んでいた。そのアイデアや、よし。

先述のように、見つけてきた「この道一筋」の趣味(とも既に言えないようなグレードのものもあったが)を持つ人(つまり素材)が、素晴らしかった。中山道を30年に渡り描き続けている男性。描かれた沿線の総延長は74キロになるという。ひと巻き20メートルの描画用ロール紙を合計1万メートル(10km!)アメリカに特注。(1000万円だという)。これを「病膏肓に入る」と云わずして何をそういいうのか、という状態!彩色担当のの奥さんも手伝っていたが途中で病に倒れ、今は一人で軽自動車をアトリエに改造して描いている。描いた画の巻物はkm単位なのだろう。人は好きなことに取り憑かれるとここまでするんだ、と驚いてしまう。描くことがすでに人生になっているのだ。このパートだけ照英がリポーターとして付いている。

また二人目は親子二代で日本中の国道標識(1号線とか23号線とかを書いた青い逆三角形の標識)を43年間に渡り撮影し続けている父と息子が登場。彼らの歩んだ歴史を写真を使って振り返る。あと数カ所で全・国道を制覇するという。息子さんはいま年老いた父を家に置き、自らバイクで日本を回っている。町工場を営む父がたまたま息子を写したスナップに国道標識が写っていたことから始まった家族・親子の旅。これも、一家揃ってよくもまあ続けられたものだと驚いたり感心したり。

そして三人目は熊野古道が世界文化遺産に指定される遥か前から、25年間、熊野の山に入り、古道を発見し、更に一人で整備し続けている男性と、それを支える妻を再現ドラマも使って紹介する。この方の趣味というよりボランティアに近い活動は、大きな発見に繋がったり、まさに「事実は小説より奇なり」を地で行くような人生で、驚嘆せずにはいられなかった。手入れをしているのが「自分の山」というのにはちょっと引いたけど。

紹介された3組の「コツコツさん」の人生、なかなか私達が簡単に真似が出来るものではない。これだけ打ち込めるものを持った人は幸せだな、とつくづく思う。また妻や家族の理解がなければ到底出来ることでもない。その当たりの夫婦愛、家族愛も汲み取れて、「ぱらぱらマンガ」と合わせて、心が暖かくほのぼのとした気分になった。VTR取材もきめ細やかかつ丁寧で良かった。

スタジオ進行はナインティナインの二人で、東海テレビの女性アナがアシスタントとしてつく。ひな壇ゲストはミスター「コツコツ」西川きよし、女優北乃きい、お笑い芸人小峠英二の3人だ。聞かずもがなの反応しか返ってこないが、ある程度の出演者のグレードを保たないと、せっかく素材が良くてもなかなか見てもらえないことを考えるとき、まずまずキャッチーで無難な人選だっただろう。

ひとつ注文を付けるとすると、ナレーターだ。服部潤さんは、今や高視聴率の番組をたくさんもつ名ナレーターではあるが、あちらこちらで聞く声が、逆に内容がしっかりしている番組を安っぽく感じさせてしまったのでは、と私は感じた。局アナか、俳優あたりを使ったほうが内容が生きたのでは?

素材だけで番組を作ろうとすれば出来ただろう。それを吉本の人気芸人を持ってきてスタジオを開き、リアクションも取りながらの進行とした。スタジオはなるべく短くしたのではないか。途中で登場したスタジオのみの小ネタは不要な気もしたが、チェンジオブペースとしては悪くなかったのではないか。「ぱらぱらマンガ」の存在もあり、驚きと感動に満ちた出来の良い番組に心地よい時間を過ごさせてもらった。(KING)