「池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ」(メ~テレ:報道)

  • 番組名:「池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ~伊勢湾台風の記憶と教訓~」
  • 放送局:メ~テレ
  • 放送日時:2019年9月1日(日曜)午後3時20分~午後4時30分

今年で8作目となる。継続はチカラなり、だしローカル放送局の使命として啓発番組を視聴者に提供し続ける意義は大きい。かつてはゴールデンで放送していたが、2年ほどまえから土日の日中に移動している。G帯はローカル事情だけでは何ともならないことは理解できるが、出来れば午後7時台に放送し続けてほしかった。ただ今年は防災の日にずばりハマったので、その点は視聴者の興味を引くタイミングで放送で、良かった。

毎回池上彰を進行役に据え名古屋ゆかりのタレントを配しての座組を続けてきた事は、ある種の安心感を生んでいるのではないか。かつては「東南海地震」にスポットを当てたものだったのだが、このところ、スーパー台風やゲリラ豪雨など地震以外の災害も着目せざるを得ない状況になり、番組は柔軟にこれに対応してきている。折しも今年は伊勢湾台風から60周年。今回は伊勢湾に池上を乗せたボートを出し、防潮堤の高さなどをリアルな目線で感じるリポートから始まった。

今回で大事な点は大雨警報の「レベル化」と南海トラフ大地震の「臨時情報」の解説だったろう。伊勢湾台風がきっかけて誕生した「災害対策基本法」だが、この法律は「行政が市民を守るための法律」であったため市民が行政におんぶにだっこ状態となってしまったという反省を生んでいるとも指摘される。(番組でも池上がラストで言及していた)つまり市民が自分たちの命は自分たちで守る、という意識が低いままということだ。大きな災害を受けて出来た「レベル化」も、市民がまともに捉えて貰えなくてはどうしようもない。大雨で避難命令が出てもほとんどの人が避難していないなどの例は最近良く聞かれる。

番組ではそのような状況を受けて、「レベル化」を時間を割いて解説した。台風の実験も良いけど、今回の目玉にもっと時間を割いても良かったのではないか。そういう点から観ると、守山区瀬古学区の市民によるマップ作りと三重県紀宝町の市と自治会が協働した「タイムライン」避難は取り上げた甲斐があったと思う。川に囲まれたエリアという差し迫った危機がある地区ということもあろう。地元のリーダー作りに対する苦労などにも触れられたら番組の広がりが出たのではないか。また情報は貰うものではなく積極的に取りに行って欲しいとクドくいうべきだったと感じた。

もう一つの目玉は「南海トラフ大地震」に向けた「臨時情報」だった。これは「レベル化」より更に受け止めるのが難しい情報で、丁寧に説明する必要があった。ライフラインや自治体の活動なども「検討中」が多いのが大変気になるところだ。高知県南国市に取材したのは良いが、同じく大きな津波が来るといわれている三重県南部の自治体はどうしているのか、そのあたりを聞きたかった。

番組最後でタレントの井戸田が「役所頼みにしないで自分から情報と取りに行く大切さ」を学んだ、と語り、池上は先に書いた「災害対策基本法」の弊害を反省し、自分の命は自分で守ることを考えようと呼びかけた。締めのコメントがとても重要だったわけで、このニュアンスは番組中、何回も提示したほうが視聴者に浸透したのではないか、と感じた。来年の制作が更に磨きがかかったものになることを期待したい。(KING)